米国の3月利上げの地ならしが進んだ1週間

先週(2017年2月27日-3月3日)の世界の株式市場は東アジアの新興国を除いて堅調でした。主要市場の週間騰落率は現地通貨ベースでTOPIXが+0.5%、米S&P500が+0.7%、独DAXが+1.9%それぞれ上昇しましたが、上海総合は▲1.1%下落しました。

世界的に見ると、ドイツに加えフランス、イギリスなど欧州株の上昇が目立ちます。一方、上海にならんで香港、台湾、韓国の株式市場は軟調でした。

先週のポイントは、米国の次の利上げが3月に行われる公算がきわめて高くなり、金融市場でその地ならしが進んだことです。イエレンFRB議長を始め連日FRBの要人が利上げが近いことを示唆し、金融市場は利上げをほぼ織り込みました。こうした中、米ドルはメキシコペソとユーロに対しては値を下げましたが、他の通貨に対してはおおむね上昇しています。

一方、欧州の2月の消費者物価指数が対前年同月比+2%増となるなど、世界的な景気の体温も改善を続けていることもあり、主要国の長期金利は大幅に上昇しました。このため、債券から株への資金シフトが再び進んだことが主要国の株高を演出しました。

注目されたトランプ米大統領の演説には新味や具体策の提示はありませんでしたが、逆に期待感を引き延ばす効果があったと言えるでしょう。

アウトルック:2月米雇用統計で3月米利上げ確認へ。再びトランプ経済政策への期待が相場を支えるか

今週(2017年3月6日-3月10日)は、欧州中央銀行理事会、米国2月の雇用統計に注目が集まりそうです。政治日程が重なる欧州での金融政策に変化が出るのか、米国の利上げで新興国の通貨、株式市場に大きな影響が出るのか注意が必要と思われますが、今のところ市場の反応を見る限りその心配は小さいように見受けられます。

株式市場の上昇は、債券から株式への資金シフトが続くかどうかがポイントになりますが、トランプ演説直後に上昇した米株は、その後一服し小幅調整をしています。このところ米株はやや柱不在という気がしますので、新しい柱が出てくるのか、あるいは動画共有アプリ「スナップチャット」を運営するスナップなどの新興企業株が市場の熱量を支えるのかにも注目したいと思います。

椎名 則夫