新築、中古を問わず首都圏に住む際には、マンションを住居として考える人も多くいるでしょう。東京23区内では、一戸建てに住む人の割合は24%、対してマンションを購入して住んでいる人は19%となっており、全国平均の戸建て52%と比較すると、都内に限れば年々マンションに住む人の割合は一戸建てに住む人の数字に近づいてきています。

マンションに住む人が増えている背景としては、その立地の良さや職場への通勤面、また眺望の良さに加えて、やはり23区内では一戸建てを一般的な収入のサラリーマンが購入するのは難しい、しかしマンションならばなんとか家族で住める大きさの家が都心でも買える、といった経済的な都合という側面も大きいでしょう。

しかし一戸建てと比較をすると、マンションは集合住宅だけに、色々な維持費が必要になってきます。長年マンションに住み続けるとしたら一体どの程度の出費を考えなければいけないのでしょうか。

マンションの維持のためにかかる経費

それでは最初に、マンションに住み続ける場合にはどのような経費がかかってくるのか、それを具体的に挙げていきたいと思います。一戸建てに住んでいても必要となるものもありますし、マンションならではの経費もありますので、その差をよく知っておきましょう。

管理費

マンションに住むとほとんどの物件で必要となるものです。賃貸のマンションやアパートに住んでいる人でも請求された経験があるのではないでしょうか。マンション全体のゴミ出しや消火器、水道や共有部分の電気代など、マンションの住民全員が使用する設備の維持費になります。

また管理人がいる場合はその管理人の人件費ともなりますし、エレベーターの定期的なメンテナンス、整備代なども管理費から捻出されます。

管理費が高いマンションを敬遠する人もいますが、エレベーターなどの設備は点検が義務付けられていますし、安く抑えるために管理をほとんどしていないマンションは階段や通路の電機が切れても放置され、ゴミもたまり放題、落書きなども消されないなど治安面や衛生面が大きく悪化します。管理費は快適かつ安全に住むためには必ず必要な経費です。

ただし一戸建ての場合ならば管理費はかかりません。それは一戸建てでは必然的に自宅の掃除は自分で行いますし電灯が切れたら、当然自分で取り替えなければいけません。水道の修理なども全て自分で行わなければいけませんし、宅配便の受取も管理人におまかせ、とはいかないでしょう。

つまり修理のためにその都度自分で動き、お金を支払うか、毎月定期的にお金を支払うかの違いになります。どちらが得とは一概にはいえませんが、出費を省くこと”だけ“を考えたら一戸建てでは管理費はかからないので安く抑えることができます。

管理費の相場としては、高級なマンションほど高くなる傾向にありますが、床面積に比例して増えるので、平方メートルあたり平均は首都圏では220円ほどです。4人家族が住める80~90平方メートルほどのマンションならば16,000~20,000円程度でしょう。

修繕積立金

次に必要なのは修繕積立金です。管理費が毎月の定期的なメンテナンスに必要なお金としたら、修繕積立金は10年に一度などの大規模な修繕費のためのお金になります。

美観を保つ、また機能面の維持のためにマンションは10年や15年に一度、外壁や屋根の塗装や補修工事を行います。また劣化が進みやすい配管なども大規模修繕に含まれます。その他にもプールやキッズルームなどの設備があった場合にも、これらの維持のために修繕積立金を使用することがあります。

管理費と同様で設備が充実しているマンションほど修繕積立金は高く、また床面積が広い部屋に住んでいる人ほど、高額の修繕積立金を支払わなくてはいけない傾向にあります。一般的にはマンションで管理組合を作り、そこで相談の上で、大規模修繕のために積み立てるお金を算出し、それぞれに割り当てます。

さらに大きな問題として、修繕積立金はほぼ必ず大規模修繕のたびに負担が増えます。当然ですが建物は住めば住むほど劣化が進むのでメンテナンス代の必要性が高まっていきます。

さらに将来的な建て替えの検討が行われている場合には、その建て替え費用にも充てられます。これも一戸建ての場合は特に必須にはならない支出になります。ただし一戸建てに住んでいる場合にも水回りの設備の交換や修理、外壁や屋根の塗装は長く住んでいれば必須となります。特に外壁や屋根塗装は数十万から100万円以上の出費になるので、一戸建てに住んでいる人もそういったメンテナンスのために、常に貯金をしておく必要があるでしょう。

駐車場代

ファミリー向けマンションにはたいてい駐車場が併設されています。屋外駐車場もありますし、地下などに機械式の駐車場が設けられていることもあります。一戸建ての場合はまず間違いなく駐車場スペースを確保して建てるので、これは特にマンションならではの出費と言えるでしょう。

相場としては25,000~30,000円程度になっています。また屋外駐車場はスペースが必要なので、都心のマンションではなかなかありません。機械式の駐車場の場合はメンテナンスが必要なので管理費や修繕積立金にも反映されます。

設備の使用代

都心型のタワーマンションは付加価値を高めるために、ゲストルームやキッズルーム、また時にはシアタールームやバーなどを共有設備として設けていることもあります。このような施設や設備は無料で提供しているケースは稀であり、利用のたびに使用料を支払う必要があります。ゲストルームを使用する場合は1泊で1万円以上と高額になることもあり、設けてはみたものの、誰も使用しなくなるケースも見受けられます。

こういった設備は利用しなければお金がかからないものと思われがちですが、修繕費や管理費にはこれらの運営のための費用が含まれていますし、特にマンション全体での住人の数が減ると、少ない住人でこれらの設備の運営費用を負担しなければいけません。場合によっては廃止されるケースも少なくないようです。

管理人の人件費

マンション、特に高級なマンションには管理人やコンシェルジェが専門に付いていることがあります。コンシェルジェともなると、管理人以上の仕事をしてくれるので時間をお金で買えるような人にとっては有用なのですが、住人の数が減ると雇用のための費用がそれぞれの住人に多く課されることになります。

固定資産税

固定資産税に関しては一戸建てもマンションも同様に課税されます。

固定資産税は土地と建物を別々に計上されます。マンションに住んでいる場合は敷地全体の面積を戸数で割るので、一戸あたりの専有面積は、マンションが縦に大きくなるほど少なくなるので、その点では一戸建てよりも割安になるでしょう。

ただし建物に関してはマンションのほうが鉄筋など強固に作られているので、耐用年数が木造戸建ての22年に対し、鉄筋マンションは47年にもなります。また設備も充実しているので建物の評価額が高くなる傾向にあります。大まかに言えば土地の固定資産税は家が高く、建物の固定資産税はマンションのほうが高くなります。

また固定資産税は土地の評価額によって決められるので、立地が良い場所に建てられることが多いマンションのほうがやや高くなるといえるでしょう。

リフォーム費用

中古マンションを買った場合には水まわりを中心に設備が劣化していたり、壁紙に汚れが目立ったりすることもあるので、それらのリフォームをしなければいけないことがあります。また新築を買ったにしても、10年、20年と住んでいればやはり各所のリフォームの必要性が出てくるでしょう。

美観の維持だけではなく、住む人間の数に応じて部屋の数を変えるリフォームや、バリアフリー対応、キッチンやバスルームのリフォームをなどしなければいけません。ただこれは一戸建ての場合も同様です。

比較をすると一戸建てのほうが面積が広いので、リフォームやリノベーションの自由度が高い代わりに費用が高めになる傾向があるようです

一戸建てとの大きな違いをまとめると

おおまかにまとめると、戸建てでは修繕や管理を全部自分の手で行う、もしくは全く行わなければ管理費や積立修繕金としての支出を0に抑えることも不可能ではありません。

対してマンションでは管理会社に管理を依頼していることが多く、また住人で結成する管理組合で積立修繕金をそれぞれの住人に割り当てるので、毎月の固定費用として必ず出ていく傾向にあります。固定資産税に関しては立地に左右されるので一概にはいえませんが、マンションのほうが立地に良い分やや高くなるでしょう。

戸建てで駐車場スペースを確保していれば、駐車場代を支払う必要が無いのが、マンションとの大きな差になります。

新築マンションと中古マンションを購入した際の違い

戸建てとマンションの大きな差について触れましたが、マンションの中でも中古と新築で維持費に大きな差が出てきます。維持費がより掛かる傾向にあるのはどちらでしょうか。

中古マンションの維持費は新築マンションよりも高い!

結論から言うと、中古マンションの維持費は新築マンションより高い傾向にあります。その理由としては

  • 経年で住人が少なくなっており、数少ない住人で維持費を分担しなければいけない
  • 経年劣化でメンテナンスの費用が高くなる

この2点になります。

修繕積立金は年数を経るごとに高くなるとお伝えしたように、中古マンションの方が新築されたばかりのマンションよりも様々なメンテナンス費用がかかるのです。

さらに新築時に一斉に似たような年代の住人が入ったマンションの場合、20年も経てば徐々に出て行く人が増え、かつ新しい住民が十分が入らないことも多くあります。特に地方や郊外で顕著であり、都心の場合は人口が増えているので、それほど懸念する必要はありませんが、人口減少地域では中古マンションにどれくらいの住人がいるか、また住人の年齢構成はどうなっているかを見ておく必要があります。

またもう一つチェックしておくべきポイントとして、修繕積立金がしっかりとプールされているのか、という点があります。大規模修繕計画が予定通りに実行され、修繕のためのお金も積み立ててあれば問題ないのですが、外国人が多く住むマンションなどは、人の入れ替わりも激しく連絡不足を理由に満足な積立金がない場合もあります。

中古で購入を検討する場合は管理組合に、大規模修繕計画の実施と積立金が満足にプールされているかを、必ず確認するようにしましょう。これを怠ると全く修繕が行われず美観も治安もどんどん悪化する可能性を考慮しなくてはいけません。

一方で何点か中古マンションのほうが安い部分もあります。

  • 物件価格は築年で大幅に安くなる
  • 固定資産税は建物の価値が下がれば安くなる

直接の維持費ではありませんが、中古物件のほうが新築物件よりも当然価格は安いです。20年も経てば鉄筋のマンションでも建物分価格は新築の6~7割程度でしょう。しかしリフォームも同時に必須なので劇的に安いということは、実際にはそれほどないようです。

固定資産税は最初の5年や7年の半額になる優遇措置の後一旦上がりますが、建物の価値が下がれば、徐々に安くなっていきます。土地の評価額も3年に一度変わっていきますが、都心では上昇していますが、地方では低下傾向にあります。

また築20年や30年のマンションを買えば、新築よりも建て替えまでの年数が短いので、建て替えを行うかどうかが非常に切実な問題になります。

一見安くてお得に見える中古マンションですが、

  • 修繕積立金など固定支出の高さ
  • 建て替えを現実的な問題をとして考えなければいけない

こういった問題があることを強く意識しておく必要があります。住人が多く、空き部屋がない中古マンションならば管理費や修繕積立金の負担も分散されるので、その確認は怠らないようにしましょう。

老後に維持費で困らないために、心がけておくべきポイント

マンション、特に中古マンションを購入した人は毎月のローン返済だけではなく、多額の固定支出があることがお分かりいただけたでしょう。

一般的な収入の人の人生設計として30代に35年ローンで住宅を購入し、退職金でローンを完済。その後住宅費負担をかけずにマイホームで過ごし、年金は生活費に充てるという人が多くなっています。

しかしマンションはマイホームと違ってローン返済後も住み続ける限りはかなりの固定費用がかかります。

特に経年毎に増えるので、65歳を過ぎても毎月5万円以上の固定費が掛かるケースも珍しくはありません。年金支給開始年齡が遅くなり、その支給額も減っている中で、住居に関する固定費を計算した老後の人生設計をしておかないと、マンションに住むことが不可能になることすらあります。

終の棲として買ったつもりだったマンションを失わないためには、どんな準備をしておけばよいのでしょうか?

維持管理費を住人で相談し、見直しを行う

管理費をマンションの管理会社任せにしている場合は、高い中間マージンを取られている可能性もあります。また管理人は24時間常駐している場合はその人件費もばかになりません。

そこで住人同士で相談し、掃除やメンテナンスを自分たちで行うように相談する、またもっと安く管理を任せられる業者を自分たちで探す、などの手段が考えられます。

さらに不要である設備を使用しないようにするなど、自分たちでこれまで全く管理を行ってこなかったのであれば、見直すことで大幅に軽減することも可能です。

修繕管理費についても健全な運用が行われているかを、マンションのデベロッパーなどに聞くようにしましょう。きちんと住人同士が問題意識を持ち、手を取り合って協力することが求められます。

小振りなマンションに転居する

管理費や積立修繕品は、住居の面積に応じて課せられる場合がほとんどです。そこでもっと狭いマンションに引っ越しを行い、管理費や修繕金の負担を減らすことを考えましょう。もともと家族4人で生活をしていたとしても、子どもたちが成長して独立すればそれほど大きな家は必要がなくなります。

子供部屋はいらなくなりますし、夫婦二人のみで生活をするのならば1LDKでも十分快適に生活できます。大きなマンションを売り払い、もっと新しくて面積の狭い、2人用のマンションに引っ越せば毎月の維持費を大きく減らすことが可能です。

ただしそのためには、マンションを売らなくてはいけません。駅から離れた立地の悪い場所、人口が減っているエリアなどはマンションが売りづらい、売れたとしても僅かな価格にしかならないことも考えられます。

資産価値が落ちにくいマンションを買っておく

上で触れたファミリー用のマンションを売り、2人用のマンションに移り住むことを将来的に視野にいれるのならば、最初のマンション選びが大変重要になります。

30代で買って子どもが独立する30年後に売却をする。建物の価値はすでに0に等しいでしょうが、地価の上昇によってキャピタルゲインが得られる場合もありますし、物価が上昇していれば購入時の価格を上回ることもあります。

そんな資産価値が落ちにくいマンションを購入するには

  • 立地の良いマンションを選ぶ
  • ブランドイメージの良いデベロッパーを選ぶ
  • 将来の需要を考えて選ぶ

以上のようなポイントがあります。

ターミナル駅や急行停車駅など、交通の便の良いエリアの地価は簡単には低下しません。また住友や東京建物、三菱地所など歴史の長い不動産業者が手がけるマンションは品質も高く、ブランドイメージが良いので中古でも人気があります。富裕層が住むようなマンションであれば築古でも状態がよく保たれているでしょう。

そして人口の動向は最重要のポイントです。結局は土地の値段も需要と供給の関係で上下します。人口が増えれば必ず不動産の需要はあるので、売れないということはないでしょう。逆に人が減っているエリアでは不動産も有り余って、泣く泣く価格低下競争を強いられることになります。

維持費を捻出し、老後の生活を安心して送るためには最初の住まい選びが大変重要と言えるでしょう。

幸いマンションは比較的戸建てよりも売買が容易だと言われています。徒歩5分圏など駅前にマンションを買っておけば、多少高い買い物になっても将来的に、自分たちの資産となってくれるでしょう。

マンションの建て替えはあり?なし?

あり?なし?マンションの耐用年数は鉄骨マンションならば最低でも60年以上と言われています。特に近年では建設の資材の質や技術の向上で、100年持つと言われるマンションも出現してきています。

マンションの建て替えのために修繕積立金があったとしても、実際にはその積立金だけではとても費用が足りずに、追加で1000万円など多額の支出を強いられかねません。

実際にマンションの老朽化に伴い、建て替えを行った物件はわずか数百件とも言われています。まず日本にマンションが立ち始めたのが1960年代、ブームとなったのが1970年代なので、それらのマンションの耐用年数がようやく訪れたかどうかと言うところなのです。

改正マンション建て替え円滑化法の施行により、旧耐震基準の1981年以前のマンションならばマンション住人の8割の同意で建て替えが可能になりましたが、1982年以降に建てられたマンションは現在の耐震性基準を満たしているので、必ず建て替えなければいけないというわけではありません。

実際に人生の残り20~30年を過ごすために新築マンションは不要と考える人も多くいるようであり、今後の動向はまだ不透明ですが、修繕をつど行いながら住み続ける人が多いと見られています。

一生賃貸という選択肢

賃貸ここまで戸建て、マンションそれぞれの住宅の購入を想定して話をしてきましたが、場合によっては一生賃貸で過ごすという人生設計ももちろんあります。

賃貸物件でも

  • 固定資産税や修繕積立金がかからない
  • 周囲の住人とトラブルが合った時に気軽に引っ越せる
  • 家族構成によって住み替えが容易
  • 震災など自然災害が起きてもダメージが少ない

などのメリットが挙げられます。

もちろんデメリットとしても

  • 「自分の家」を持つという充足感を満たせない
  • 全体的に割高である
  • 定年退職すると家を借りにくくなる

などの要素が挙げられます。

不動産賃貸サイトで調べると、4人家族に必要な80平方メートル以上のマンション相場は最も安い葛飾区で約12万円、豊島区、杉並区、世田谷区などで18万円ほどです。葛飾区ならば4,320万円、それより立地の良い場所で4人家族が住める物件を30年借りると総額で6,480万円です。

その後の20年夫婦二人で過ごせる50平方メートルほどのマンションを10万円で借りると、総額2,400万円です。

年金だけが頼りになったときに、賃料をどうやって捻出するかが問題になりますが、どちらかが亡くなれば一人暮らし用の物件に住む、子供の家に住むなど柔軟な転居も可能です。

下に大まかな50年間の維持費の概算をまとめました。マンションに住む人は、定年後に夫婦用のマンションに引っ越すことを想定しています。
50年間の維持費の概算

まとめ

マンションと戸建ての比較で考えれば、維持費をとにかく少なく抑えたいならば自分の手を動かして、維持費を抑えられる戸建てのほうが向いています。ただしマンションは売却がしやすく、家族構成の変化により住替えがしやすいので、子どもが独立すれば支出を抑えることも可能です。

また新築と中古では、購入価格が安いのは中古ですが、何年も住むことを考えれば建て替えを考えなければいけないというデメリットもあります。

新築マンションは一見割高に見えますが、売却がしやすいので、柔軟に住居を変えられる、逆に終の棲家にしても建て替えをそれほど考えなくてもすむというメリットもあり、結果的には工夫次第で維持費を抑えられるとも言えるでしょう。

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