米国株式市場の上昇が続く、NYダウは早くも21,000ドルを突破
トランプ政権が正式発足して早1カ月半が経過しようとしていますが、米国の株式市場は強含みのトレンドが止まりません。1月26日に史上初めて20,000ドルを突破した代表的な株価指数のNYダウは、3月1日には早くも21,000ドルを突破しました。
株価の上昇ピッチは明らかに早過ぎると思わざるを得ない一方で、トランプ相場に乗り遅れたくない投資家の断続的な買いが優勢となっている模様です。
なお、NYダウは大統領選直前と比べて最大+15.6%上昇し、昨年末比で見ても+6.8%上昇しています(3月1日に付けた高値)。
金価格も上昇、年初来上昇率は株式を上回る
一方、本来は株式市場と対比的な動きをする傾向の貴金属市場も堅調に推移しています。特に、実物資産の王様である金(ゴールド)の価格上昇が続いています。
2月27日に付けた直近の高値1,258ドル(1トロイオンス当たり、以下同)は、昨年末の1,157ドルと比べて+8.6%上昇しており、単純比較では株式市場の上昇率を上回っています。
対照的だった米国大統領選後の株式と金の値動き
ただし、大統領選後の株価と金価格の値動きを見ると、大きな違いがあることが分かります。まず、株式市場に関しては昨年11月8日の大統領選後、ほぼ一本調子の上昇が続いています。
それに対して金価格は、大統領選後から急速に下落し始めました。11月初旬に約1,300ドルだった金価格は、FRBが1年ぶりの利上げを実施した12月16日前後にかけて、約1,130ドルへと最大▲13%下落しています。この頃、今からわずか2カ月強前ですが、金価格は株式とは対照的な値動きを示していたのです。
FRBによる利上げ実施で底打ちから上昇へ転じた金価格
ところが、FRBによる利上げ実施以降、金価格は底打ちから上昇に転じます。前述した直近の高値(2月27日の1,258ドル)は、利上げ実施直前の安値から+11.3%上昇しました。
本来、金利が一切付かない金にとって、市場金利の上昇は最大のネガティブ材料のはずです。その利上げが行われた直後から上昇に転じたということは、金利上昇という悪材料をいったん織り込んだと考えていいでしょう。
しかし、利上げをいったん織り込んだとしても、年明け以降の金価格の上昇ペースには目を見張るものがあります。何か他の理由が、徐々に効き始めている可能性があります。どのような要因が考えられるのでしょうか?
現時点で考えられる大きな理由が3つあります。
利上げ実施にもかかわらず進まないドル高が金価格の追い風に
1つ目は、昨年12月の利上げ実施にもかかわらず、ドル高が思ったほど進んでいないことです。いや、むしろ、わずかながらドル安トレンドにあると見ることも可能です。
一般に、金価格は米ドルと逆相関の値動きをします。ドル高が進まない現状が、金価格にプラスに効いていると考えられます。
2017年に見込まれる2~3回の利上げ実施は大丈夫か?
2つ目は、2017年に見込まれる追加利上げ実施への懐疑的な見方です。
FRBのイエレン議長は、2017年に追加利上げを2~3回実施することを明言しています。ただ、昨年(2016年)も当初は年3~4回の利上げを見込んでいたにも拘らず、結局は最後の12月に辛うじて実施しただけでした。こうした“利上げするする詐欺”が再現することを懸念している可能性もあります。
しかし、現時点では、2017年3月の利上げ実施の可能性が高まった結果、3月に入ってから足元の金価格は弱含んで推移しています。
欧州地域の政治リスクを織り込み始めた可能性
3つ目は、欧州地域の政治リスクを織り込み始めたことです。2017年はフランス大統領選挙(4月~5月)、ドイツ総選挙(9月)など重要な選挙日程が控えていますが、その第1弾であるオランダ総選挙が3月15日に実施されます。
欧州の政治混乱が金価格を大きく押し上げたことは、昨年のブレグジット(英国EU離脱)でも明らかになりました。オランダ総選挙の結果次第では、フランスとドイツの欧州大国で起きるかもしれない政治混乱をいっそう織り込む展開も予想されます。
まずは3月のFOMCに注目、利上げ実施がコンセンサスだが…
金の価格には、世界の政治・経済・金融が反映されると言われます。全てに注意を払う必要がありますが、足元の価格上昇を勘案すると、まずは3月14~15日に開催されるFOMCでの利上げ実施の有無が最大の焦点です。
“利上げ実施の可能性が極めて高い”というコンセンサスが固まりつつあるからこそ、なおさら注意が必要になるかもしれません。
昨年、大きなコンセンサス外しを2度も経験したこと(ブレグジット、トランプ勝利)を忘れないようにしたいものです。
LIMO編集部