突然の大西社長退任報道
三越伊勢丹ホールディングス(3099)代表取締役社長執行役員の大西洋氏が辞任すると、2017年3月6日の日本経済新聞などで報道されています。同社の発表によれば2017年3月7日開催の取締役会で決議されるとのことです。
三越伊勢丹ホールディングスは2008年に設立されました。大西氏は伊勢丹出身で、2012年から現職に就いています。
株式市場の反応は大きく、2017年3月6日の株価は対前日終値比▲5%下落して取引を終えています。したがって、このニュースは大きなサプライズとして受け止められたと言えるでしょう。
インバウンド特需消失、地方店リストラ
同社の業績はこの数年堅調でした。2014年3月期から2016年3月期にかけては3年連続で営業利益が330億円を超えています。アベノミクス効果やインバウンド景気を追い風に、収益は高水準で推移してきました。
しかし、2016年3月期の後半あたりから計数面での変調が始まります。
中間層の消費不振が衣料品を中心に広がったうえ、インバウンド消費の中身が変容し、百貨店における「爆買い」ブームが終焉したため、2017年3月期に入り既存店売上高が対前年同月を連続して下回る状況が2017年1月まで続きました。
こうした売上高の厳しさによって、2017年3月期業績会社予想の修正が余儀なくされました。2017年3月期の業績について、同社は期初の時点で通期営業利益を対前年度比+12%増の370億円と見ていましたが、2016年10月28日に同▲28%減の240億円まで大幅な下方修正を行いました。
また、業績動向の急変を受けて三越千葉店、三越多摩センター店の閉鎖も決める一方、事業構造改革を進める真っ最中だったものと思われます。
体質強化の本気度が試される
大西氏退陣の背景は十分判明していませんが、後任の経営トップは早急に求心力をもって改革を進める必要があります。
そもそも同社は2018年度に営業利益500億円を目指すとしていましたが、体質強化を優先し、いったんこの目標を取り下げています。それほど事業環境認識は厳しいということでしょう。たとえば、第2四半期決算説明の場では最大の懸案である百貨店事業の事業環境について、「ファッション消費」「中間層消費」「インバウンド」という屋台骨に課題が大きいことを的確に認識しています。
百貨店を支えてきた中高年層の消費態度の変容を、従来のやり方では受け止めきれなくなってきたと言うことができるでしょう。さらに、新しい「上客」作りが思うように進んでいないと言えるのではないでしょうか。
同社は、国内の同業他社と比べて資本効率、資産効率、労働生産性などの収益性の点でトップを張っているわけではありません。今回の大西氏の退陣を機に、一気に体質改善を進めることができるのか、同社から目が離せなくなってきました。
LIMO編集部