通信料金に関する厳しい事業環境
ではなぜ、この下落は起こったのでしょうか。
ひとつ要因として考えられるのは、ソフトバンクの通信事業を取り巻く環境の変化です。
ソフトバンクが2022年2月3日に発表した2022年3月期第3四半期の決算短信では、売上高は4兆1738億円(前年同期比+9.6%)、営業利益は8212億円(同-2.4%)、親会社の所有者に帰属する四半期利益は4208億円(同-3.0%)となりました。
ヤフー・LINE事業の経営統合による効果などもあって売上は伸びましたが、政府の施策などを背景とした通信料の値下げが響き、減益となりました。
近年、通信料金の値下げに関する潮流は強まっていたほか、楽天グループ(4755)が運営する楽天モバイルの急速な成長もあって、こうした厳しい事業環境の変化が株式市場で嫌気されている可能性は高いです。
親会社であるソフトバンクグループの株価も軟調
ソフトバンクの親会社であるソフトバンクグループ(9984)の株価も類似したチャート形状を伴って軟調な推移を見せました。
背景には、アリババの株価下落がありました。
アリババの株価は2020年10月頃から下落が続いており、アリババ株を保有するソフトバンクグループにとって、投資損益の悪化につながりました。
また、直近では中国の配車サービスを手掛ける滴滴の、米国での上場廃止も投資家の大きな失望につながったようです。
過去には親会社のソフトバンクグループの負債を保証していたソフトバンク。
今は債務保証関係はないですが、親子間での業務上の取引関係は依然として濃い状況です。
こうした関係により、ソフトバンクグループの株価下落がソフトバンクの株価の上値も抑えている可能性はあります。
執筆者
1991年生まれ。新潟県新潟市出身。2022年に株式会社モニクル傘下の株式会社ナビゲータープラットフォームに入社し、現在はメディア事業部・メディアグロース企画推進室マネージャー。くらしとお金の経済メディア「LIMO(リーモ)」を中心に、多くの読者の方に幅広いコンテンツを届けるための戦略立案に従事している。
それ以前は、LIMO編集部にてアシスタント・コンテンツマネージャー(ACM)として従事。第一報として報道されるニュースを深堀りし、読者の方が企業財務や金融に対する知的好奇心を満たしたり、客観的データや事実に基づく判断を身に付けられたりできる内容の記事を積極的に発信していた。
入社以前は、株式会社フィスコにて客員アナリストとして約20社を担当し、アナリストレポートを多数執筆。また、営業担当として、IRツール(アナリストレポート、統合報告書、ESGレポートなど)やバーチャル株主総会サービス、株主優待電子化サービスなどもセールス。加えて、財務アドバイザーとしてM&Aや資金調達を提案したほか、上場企業向けにIR全般にわたるコンサルティングも提供。財務アドバイザリーファームからの業務委託で、数千万~数十億円規模の資金調達支援も多数経験。
株式会社第四銀行(現:株式会社第四北越銀行)、オリックス株式会社でも勤務し、中小・中堅企業向け融資を中心に幅広い金融サービスを営業した。株式会社DZHフィナンシャルリサーチでは、日本株アナリストとして上場企業の決算やM&A、資金調達などのニュースと、それを受けた株価の値動きに関する情報・分析を配信。IPOする企業の事業・財務を分析し、初値の予想などに関するレポートを執筆。ロンドン証券取引所傘下のリフィニティブ向けに、週間・月間レポートで、日本株パートを執筆。経済情報番組「日経CNBC」にて毎月電話出演し、相場や株価の状況も解説していた。
新潟県立新津高等学校を経て、2013年に慶応義塾大学商学部を卒業。学部では、岡本大輔研究会にて企業評価論、計量経営学を専攻していた。
最終更新日:2023/11/03