スピルバーグが"West Side Story"をリメイクしたワケ
『ウエスト・サイド・ストーリー』は、スピルバーグの50年近いキャリアのなかで、初めての本格的なミュージカル映画です。
スピルバーグは、10歳か11歳のころに『ウエスト・サイド物語』のサウンドトラック盤を聴き、そのとりこに。「いずれは何らかの形で、自分が『ウエスト・サイド物語』に関わるだろう、という予感があった、と回想しています(※)。
1946年生まれのスピルバーグが10歳頃、ということは1956~57年のはず。映画版ではなく、ミュージカル舞台版の初演の時期からのファン、ということが考えられます。
また、2020年に103歳で亡くなったスピルバーグの父・アーノルドが『ウエスト・サイド物語』の大ファンだったことも大きいようです。
また、これまで多くの社会派映画を生み出してきたスピルバーグだからこその意図もあるでしょう。移民同士(白人と有色人種)の格差、マイノリティーへの差別、暴力シーン、貧困がリアルに描かれています。
かつての名作をリメイクすることで、いまのアメリカに残る「差別や分断」を浮かび上がらせる意図もあった、といえるでしょう。
※参照:映画『ウエスト・サイド・ストーリー』スペシャル・メイキングブック P.6