やらなければいけないような気はしているけれど、なんだか面倒…。いつも「そのうちに」と思っているうちに時間が過ぎてしまう。「やらなくちゃ!」「さあ、今日から!」と思うのに、なかなか一歩が踏み出せない。「資産形成」という言葉を聞くたび、そう感じている方も多いのではないでしょうか。
今回、投信1編集部は株式評論家でありファイナンシャルプランナー(FP)としても活躍するお金のプロ、木村佳子さんにインタビューを敢行! お金ってどうやって貯めたらいいの? 資産形成に成功するコツってあるの? 読者のみなさまに代わり、お話を伺いました!
木村佳子さんプロフィール
個人投資家向け経済情報番組のラジオ・キャスターを経て女性で初めての株式評論家として活動。財務省理財局株式専門委員(5期10年)、日本IRプランナーズ協会理事、「企業の個人投資家向けIR研究会」座長を経て同協会理事長に就任。日本ファイナンシャルプランナーズ協会CFP、一級FP技能士。早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了(ファイナンス修士)。豊富な専門知識をもとに、個人投資家向けの講演を全国で多数開催。
初心者が陥りがちな「思い込み」のワナ
――今日は「資産形成」をテーマにお話を伺います。よろしくお願いします。
木村佳子さん(以下、木村):こちらこそよろしくお願いします。
――今の超低金利時代には、資産形成といっても銀行に預けているだけでは思うようにお金も貯まりません。そこで株式投資などで「貯めるだけでなく賢く増やそう」といわれるわけですが、実際には踏み出せない、という人が多いようです。
木村:確かに「投資って難しそう」という人は多いですね。それと完璧症候群といいますか、「投資知識を全部理解してから始めなくては」という傾向も見受けられます。
資金面の事情もあるでしょう。投資に回せる余裕資金がないケースや、ある程度生活の基盤が整う30代~40代の方でも子育てや住宅関連の支出も増加傾向なので「損したら元も子もない」と尻込みしてしまうんですね。もちろん貯蓄も必要ですが、これからの日本の人口構造から、将来、税負担は増加の一途、年金は削られる傾向が強まるといえます。
貯蓄だけでは心許ないのは確かです。投資にもお金を配分したいですね。しかし、投資に対する様々な断片的な思い込みがあって、ご自身のスタイルがつかみきれないまま、時が過ぎてしまうケースが多いのではないでしょうか。
――思い込み、といいますと?
木村:まず、投資したからには短期間で結果=儲けを出さなくてはならないという思い込みです。投資したら儲かるはずだという前提で投資をすると「値下がりは想定外」で、値下がり期間中は「どうしたらいいのか」と非常に悩ましいわけです。「投資は長期」という考えで実践している人の中にも「売るに売れなくなった結果、塩漬け株や塩漬け通貨を持つことになっている」ケースも多いものです。
いずれの場合も、買ってしまってから「どうしたらいいか」「損してでも処分して他のものに乗り換えたほうがいいのか」などと悩むことになりがちです。それでは投資が苦痛になってしまいます。
――「悩まない分、現金がいいや」となるわけですね。
木村:このほか「成長する会社に投資しなければならない」とか、「割安株を探さなくてはならない」とか、様々な観点で銘柄探しをされている個人投資家は多いのですが、普段仕事をしながら、あるいは家事をしながら、子供を育てながら…成長する会社を見極めたり、割安株探しをするのは、なかなか難しいものです。ましてや、時間やお金というコストをかけたのに結果が塩漬けになったら割に合わなさすぎですよね。まさに踏んだり蹴ったりです(笑)。
――そうですね。時間的にも金銭的にも割に合わないなんてちょっと困ります。
木村:だから投資というと一般的に退職後、時間的余裕があるシニアか1日中パソコン画面に貼りついてトレードできる専業投資家のもの、というイメージになる。
でも、もっと「生活者」のための投資みたいな世界があっていいと思いませんか? それに、投資は楽しみながらできる人の勝率が高い。焦ったり、鬼のような気持ちで切迫してやる人は負けやすいというのが私の経験からいえる法則です。自分のお金を投じて苦しんだり悩んだりするなんて割に合わなさすぎる!(笑)。
忙しい人も始めやすい! 積立投資の3つのメリット
――では、日常生活では仕事や家事や育児に追われている30代や40代でも、無理なく資産形成を始めるにはどうしたらいいでしょうか。
木村:月々わずかな金額からでも「貯蓄と投資信託による積立投資のダブル・スタンダード」を実践するといいと思います。たとえば1万円で国内株式、国内債券、外国株式、外国債券に等分の金額で投資するとしましょう。国内債券というのはいわば現金預金と意味合いは似ています。景気がいい時は国内株か外国株が上がり、景気低迷の時は国内債券や外国債券がサポートというイメージです。この4配分を投資信託で積み立てるのがまずは第一歩です。
――投資信託というと、出資者から集めたお金をプロのファンドマネージャーが国内・世界の様々な株式や債券などに分散投資して運用していく商品ですね。投資信託による積立投資なら少ない予算でもそうした配分が可能だと。
木村:そうですね。日本には今投資信託が5,000本以上と銘柄数がたくさんあり、買い方も一度に買うか積立かに分かれますが、基本は人々から集まった資金を専門家が運用方針にかなった対象に投資していくというものです。
投資信託のポイントを挙げると、①プロが運用するので私たち自身が業績を調べる、判断するという手間がかからない、②少ない額の投資しかできなくてもさまざまな資産への分散投資が可能、③少額(例=1万円程度)から購入できる、という投資信託そのものの魅力に加えて、毎月定額を積み立てることで時間分散による価格分散の効果があるという点が挙げられます。積立は忙しい人や、まずは投資を始めてみたいという人に向いていると思いますよ。
――すみません、③の時間分散による価格分散効果というのはどういうものでしょうか。
木村:積立投資では一定の間隔で一定の額、たとえば「毎月1万円分」というように金額を決めて投資信託を買っていきます。投資信託の基準価額は日々変化しますから、毎月1万円分でも購入タイミングによって買える口数が変わります。つまり、基準価額が低いときは多く買うことができ、高いときには少ない口数になります。
このようにして投資するタイミングを分散すると、極端な高値づかみも避けられますし、買付価格の平準化も期待できる、というわけです。
――なるほど。少額から一定額を積み立てる方法なら、投資の初心者にも取り入れやすそうですね。とはいえ、どのくらいから始めてみるのがよいのでしょうか。
木村:まずは月1万円の積立から始めてみてはいかがでしょうか。「つもり貯金」のような感覚だと始めやすいですよ。たとえば、飲み会に1回行ったつもり、お洋服を1枚買ったつもり、ネイルサロンに1回行ったつもり、という感じですね。実際やってみると、投資に対するイメージが変わってくると思いますよ。「なんだ、こんな感じか。意外にできそう」と感じる方が多いかな。
私も実際に投資信託を購入して、大成功できたものや意外と難しかったものもありましたが、相性の良いタイプの投資信託と出会えるまでの練習だったと思います。今はだいたい3~5本の相性の良いタイプの投資信託に長期投資しています。
初心者の方は、インデックス型といって日経平均やTOPIX、ダウ工業株30種平均や世界の不動産リートが組み込まれたものなどから前述の4つの分野に等分投資する基本的なところから始めてみてはいかがでしょうか。
――少しからでもまずはトライしてみたほうがいいと。
木村:「習うより慣れろ」といいますよね。頭だけで考えているのと実際では全然手ごたえが違うと思います。少額からでも試して実践から学んでいくスタイルがおすすめです。
単品でピンポイントに投資するタイプの投資信託は株式投資と似てタイミングに結果が左右されますが、積立投資なら、リスクが分散される点で忙しい人や生活者、初心者向きといえます。時間と口数が自動的に分散される積立効果で勝率も高められると思います。気が付いたら結構貯まった! という成果が数年後に実感できるのではないでしょうか。
――まずは第一歩を踏み出すことが大切なのですね! また、いろいろなお話を聞かせていただければうれしいです。今日はありがとうございました!
木村:こちらこそ、またお会いできるのを楽しみにしています。
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LIMO編集部