関西アーバン銀行、みなと銀行、近畿大阪銀行を事実上事業統合へ

2017年2月21日付の日本経済新聞によると、「三井住友フィナンシャルグループ(FG)とりそなホールディングス(HD)は…(中略)…両社が出資する共同持ち株会社に三井住友FG傘下の関西アーバン銀行、みなと銀行、りそなHD傘下の近畿大阪銀行をぶら下げる案」を検討していると報じられています。

これは事実上、関西を地盤とする地銀の経営統合になると思われます。

地銀再編は続く。その背景は?

こうした地銀の再編が進んでいますが、筆者はこのトレンドは不可逆的だと考えています。その理由は次の3点です。

第1に、銀行は預金を集めて貸出して利ざやを稼ぐのが本業ですが、貸出が増えず、預金が余る状況が続いています。そして預金がほぼゼロ金利に近づき、貸出金利も十分低下しているにもかかわらず、利ざやが縮小傾向でその縮小を補うほど貸出残高が伸びていません。

この結果、貸出金利×貸出残高で計算される貸出利息収入が増えにくくなっています。こうなると、利益を上げるには何かコストを削減する必要が生まれます。経営統合で規模の利益を追求するというのは、典型的なコスト削減手法になるのです。

第2に、日銀の低金利政策によって地銀が「貸出以外で一息つく」ことが困難になっています。少し前までは、余った預金で国債を買っておけば低リスクで一定の利ざやが確保できたのでよかったのですが、現在は国債の利回りが日銀の政策のためゼロに近い水準です。

この結果、国債で利ざやを確保して経費を賄うことがもはや不可能になりました。先ほども述べましたが、コストを規模でカバーする必要がここにもあるのです。

第3に、フィンテックの台頭です。フィンテックはインターネット上に飛び交うさまざまな取引履歴や信用情報を活用し、その信用度を独自に計測しながら貸出を行うことが可能なテクノロジーです。貸出原資も地域性にとらわれることなく世界から調達することが可能になるでしょう。

これは従来の銀行が必ずしも得意な分野ではありません。地銀が新しい貸出先を開拓するという時に強敵が現れる可能性が見えてきました。

地銀統合、あなたの会社は無関係?

「銀行の体力が強くなれば、貸出姿勢も強化されるだろう」、そう考えるのが自然だと思いますが、過去の歴史を振り返ると、それほど前向きな影響ばかりではありませんでした。貸し手と借り手の関係を単純に考えてみても、貸し手の数が減るのですから、貸し手の力はその分強くなるはずです。

一般的に言って、銀行の再編が進む時の影響とは「貸出基準の厳格化」です。基本的に、与信姿勢の一番保守的な銀行の目線に、統合した銀行の目線が収れんするのです。

経営者としてすぐに点検すべき3つのポイント

多くの経営者の方には釈迦に説法となることは重々承知していますが、地銀再編が今後も進んでいくという前提に立った時、今すぐ考えておかなければならない点を3つ挙げておきたいと思います。

第1に、銀行統合で銀行との取引関係はいったんリセットされると考えるべきでしょう。貸出基準が厳格化されると、従来通りに借入を繰り返すのが難しくなる可能性も頭に入れておくべきです。

特に統合する銀行の複数から借り入れをしている場合、シェア調整という形で実質的に借入の部分返済を迫られることが起こりえます。このことを想定し、可能であれば資産処分などを通じて返済原資を準備することを考えておきましょう。

第2に、担保交渉をしっかりとしましょう。担保条件を変えずに借入を減らされるようになってはもったいありません。

第3は、他の銀行の出方をしっかりつかんでおくことでしょう。取引銀行をそれぞれどう位置づけるのか、企業側も考え直すきっかけにしていただきたいと思います。

どれも当たり前のことのようですが、地銀の再編はある瞬間からドミノ倒しのように進む可能性があります。今、改めて取引銀行との関係を再構築してみるのは悪い考えではないと思います。ここでまとめた内容がお役に立てば幸いです。

 

椎名 則夫