日立と東芝、歴代社長の出身学部は?
連日、東芝(6502)の経営危機が報じられていますが、あらためて経営トップの重要性というものを多くの方が実感されているのではないかと思います。そうした中、時折耳にするのは「メーカーは文系出身者が経営トップになると振るわなくなる」という都市伝説のような俗説です。
実際、東芝の経営危機の発端とされるウエスチング・ハウス社の買収時の社長であった西田厚聰氏は、早稲田大学第一政経学部出身の文系社長でした。
とはいえ、東芝は創業から142年、東芝の前身である東京電気と芝浦製作所が合併して東京芝浦電気(1984年に現在の東芝に改称)になってからでも78年の長い歴史を持つ会社です。今回は歴史をさかのぼり、また同業の日立製作所(6501)と比較することで、この「俗説」の信ぴょう性を確認できるのではないかと考え、検証してみました。
東芝のトップには文系が多く、日立は全員が理系
まず、東芝の結果から見てみましょう。1939年に東京芝浦電気が発足後、現在の社長である綱川智氏は19代目の社長となりますが、このうち経歴が確認できなかった1人を除くと、理系社長は7人、文系社長は11人と、文系社長のほうが多いという結果になります。
一方、日立は創業社長である小平浪平氏から数えて現在の社長の東原敏昭氏は11代目の社長となりますが、この間、全員が理系出身者でした。
ちなみに、両社には社長の在任期間でも大きな違いが見られます。単純計算では、東芝は約4年(1939年から現在までの78年間÷19人)、日立は約8年(1928年から2017年までの89年÷11人)と、2倍もの開きがあるのです。それだけ、日立のほうが長期政権の社長が多く、東芝は社長の入れ替わりが頻繁であったということになります。
このように、歴代社長の出身学部と在任期間だけを見ても、同じ重電メーカーではあるものの東芝と日立には大きな違いがあることがわかります。
大切なことは経営者の資質
このように、現在の東芝の置かれている状況を見る限り、冒頭で述べた「俗説」が当てはまるように見えます。とはいえ、理系社長であればメーカーは良くなるという単純な話ではないことには注意が必要です。
実際、東芝の綱川現社長や、昨年6月に退任した前社長の室町正志氏も理系ですが、これまでのところ東芝を立て直すことには成功していません。
また、言うまでもなく、技術に優れていてもそれが必ずしもビジネスの成功には結びつかないように、理系社長であればこれからも日立は安泰だということでもありません。つまり、出身学部が文系か理系かということではなく、あくまでも「優秀な経営者」であるかどうかが最も大切なポイントです。
また、変化が激しい時代であるため、歴史の長い会社であればあるほど過去にとらわれ過ぎないことも重要です。日立でも、わずか1年という短さで社長を退任した川村隆氏の存在があってこそ経営改革に成功したことは忘れるべきではないでしょう。
まとめ
いかがでしたか。社長の出身学部、在任期間という切り口からだけでも、それぞれの会社に特色があることがご理解いただけたかと思います。
ただし、繰り返しになりますが、個人投資家、ビジネスマン、就活生などのいずれにおいても、会社を見極めるうえで最も大事なことは、その会社のトップが経営者として優れているかどうかであって、理系か文系か、長期政権か短期政権かではないことを強調しておきたいと思います。
和泉 美治