「ASMR=バイノーラル録音」ではない

ASMR関連で気になることは、ASMRとバイノーラル録音があまりにも結び付きすぎていることです。

バイノーラル録音とは、人間の頭部や、その音響効果を再現するダミーヘッドなどを利用して、鼓膜に届く状態で音を記録して、ステレオ録音を聴いた際の臨場感を高める録音技術のことです。

バイノーラル録音をした音源はヘッドホンで聴くと「耳元で話している」ように感じられることから、声優の音声コンテンツとして、以前から人気がありました。

もちろん、人間の囁き声はASMR感覚を誘発する条件(片耳に極端に近い人工音)を持っていますが、ASMR感覚を誘発する音は「耳かき音」「野菜を切る音」「石鹸を削る音」など想像以上に範囲が広いので、必ずしもバイノーラル録音の人間の声である必要はありません。

極端な話、自分で耳かきをしたり、片栗粉を水でこねていたりするだけでも「ASMR音が聞こえてくる」状態になるのです。

私自身、自分の耳で耳かきをしていると、耳がきれいになること以外でも音でも癒されているので、仕組みはわからないものの、確かにASMR的な現象は経験しているようです。

ASMRはいつ頃出てきたのか。論文数推移を見る

インターネット上で公開されている論文数推移について、「Google Scholar」を活用してみてみました。

2022年1月14日現在、autonomous sensory meridian responseをキーワードに含む論文は890件あります。

これを、公開年別に分けてみます。

  • 2022年:11件
  • 2021年:190件
  • 2020年:194件
  • 2019年:125件
  • 2018年:93件
  • 2017年:59件
  • 2016年:38件
  • 2015年:24件
  • 2014年:2件

2019年頃から、ASMRを扱う論文数が急激に増えていることがお分かりいただけるかと思います。

研究対象になったのがここ10年以内の話であるため、” Autonomous Sensory Meridian Response”や「自律感覚絶頂反応」が具体的にどういう反応なのかは医学的には解明されていないのですが、「経験上、そういう現象が確認されている」状態のASMRに対して、各種アプローチから研究が進められています。