「年金の時効」とは

日本の年金制度は2階建てです。国民年金は、日本に住む20歳以上60歳未満の全員に加入義務があり、厚生年金は公務員や会社員などが上乗せで加入します。厚生年金にも加入すれば、その分受け取る年金も「老齢基礎年金+老齢厚生年金」と手厚くなる仕組みです。

しかし、先ほどご説明したとおり、年金は自動的には振り込まれません。いくら保険料を納めても、あくまでも「年金を受ける権利(基本権)があるだけ」なのです。

この年金を受ける権利(基本権)は、権利が発生してから5年を経過すると「時効により消滅する」と定められています(国民年金法第102条第1項・厚生年金保険法第92条第1項)。

5年も放置するのは稀に思うかもしれませんが、可能性はゼロではありません。特に、今後繰り下げ受給が75歳まで拡大することで、受給時期のタイミングは多様化します。タイミングによっては、「うっかり」が起こる可能性も出てきます。

「繰下げ受給」を考えるなら、時効に注意!

国民年金・厚生年金ともに、65歳ではなく66歳以降、70歳まで受け取る時期を遅らせることができます(2022年度から75歳に拡大予定)。

繰下げ期間1カ月あたり0.7%年金が増額するため、70歳までの5年間繰り下げると42%、75歳まで10年繰り下げた場合は84%も年金額が増えることになりますね。

貯蓄が少ない方、長生きリスクに備えたい方などは、繰下げ受給も検討しているかもしれません。この「繰下げ受給」をする場合は、特に時効の落とし穴に注意しましょう。

例えば国民年金・厚生年金ともに70歳まで繰下げ受給をしようと決めたなら、あらかじめ「老齢基礎年金・老齢厚生年金支給繰下げ請求書」を提出する必要があります。しかし、これは「老齢基礎年金の権利発生(原則65歳)から1年経過した日より後」しか請求できません。

さらにこの後、70歳になったときに改めて年金請求書を提出する必要があるのです。66歳での繰下げ請求書、70歳での年金請求書。期間が空いて2回請求することになるので、「うっかり」の頻度は高まりますね。

最近では65歳以降も働くシニアが増えたので、「まだ年金をもらわなくていいや」とほったらかしにするケースにも注意が必要です。