■公共投資と減税には一長一短あり

公共投資の良いところは、必ず失業者が減る、という事です。政府が自分で失業者を雇うわけですから、当然ですね。雇われた元失業者が給料をもらって消費をすれば、更に景気が良くなって更に失業者が減る、という期待も持てるでしょう。

一方の減税には、失業者が減らない可能性があります。所得税を減税された人が消費をせずに貯金してしまえば景気は良くならないですし、設備投資減税をされても以前から設備投資を予定していた企業だけが設備投資をするという場合には景気を良くする効果が無いからです。

しかし、公共投資には悪い面もあります。

不況期に急いで道路を作るためには、用地買収の簡単な田舎が選ばれがちですが、田舎に道路を作っても人も車も通らない無駄な道路になってしまう可能性があるからです。

一方の減税であれば、所得税減税であれ設備投資減税であれ、減税された人が必要だと思う場合にだけ消費や投資が行われるわけですから、無駄な物が作られるという事はないわけです。

「公共投資は無駄だ」は誤解

公共投資は無駄だ、と思っている人も多いようです。バブル崩壊後に巨額の公共投資が行われましたが、景気が良くならなかった上に、莫大な借金と無駄な道路だけが残ったから、というわけですね。

しかし、これは二つの意味で誤解だと筆者は考えています。景気が良くならなかったから無駄だった、無駄な道路が出来たから無駄だった、という二つです。

あれだけ大きなバブルが崩壊したわけですから、公共投資をやらなければ大不況になっていたはずなのに、公共投資のおかげであの程度の不況で済んだわけですから、公共投資には大きな効果があったのです。

公共投資をしなければ大不況が来ていた、という事を証明することは容易ではありませんが、筆者はそうだと信じています。

理科系であれば実験室でバブルを100回崩壊させてみて、公共投資をやった場合とやらなかった場合が比較できるのですが、それが出来ないので筆者の主張を裏付ける証拠は残念ながらありませんが、それが筆者の考える「常識」だというわけですね。

無駄な道路が出来たから公共投資が無駄だった、ということも言えません。失業者が減ったことは間違いないからです。ケインズは、不況の時は失業者を雇って穴を掘らせろ、と言ったようですが、穴を掘るよりは田舎に道路を作る方がマシだ、と筆者は考えているわけです。