経済力の差は学力格差に繋がるという見方はすでに一般化していますが、その対象を運動能力に置き換えるとイメージはガラリと変わります。運動能力というのは生まれ持った才能であるという考えが根強く、否それ以前に「それが当たり前」とみられているからです。

オリンピック選手やプロスポーツ選手のレベルとなると本人の素質と努力による賜物であり、一般人からすると到底叶わないレベルと認識されています。

しかし、実は子どもの運動能力も年収に関係すると言われたらどうでしょうか。俄かに信じられない人の方が多いでしょう。

画期的な年収と子どもの運動能力の関係性を見出す研究

筑波大学の清水紀宏教授を研究代表とする「子どもの体力・スポーツ格差に関する基礎的実証研究」は2016年から2018年に渡る調査研究であり、日本国内ではこれまでほとんど行われてこなった「子どもの運動能力と世帯年収の関連性」に着眼した研究です。

日本学術振興会の科学研究費助成事業として実施され、調査対象は岐阜県多治見市の公立幼稚園、保育園、公立小学校13校と公立中学校8校の合計38校園の園児と児童生徒そして保護者。

同じ岐阜県の恵那市で行われた「令和2年度  第1回恵那市スポーツ推進審議会」の資料の一つとして研究結果の概要が含まれていました。

それによると、「学力が低い子は運動能力も低い傾向がある。そして、その傾向は学年が上がると拡大していく」というものでした。学力と運動能力は関連性が乏しいと捉えられることが多いなかで、かなり衝撃的な結果となっています。

学校外でスポーツにお金をかけている世帯の子は学力と体力が向上し、そうではない世帯の子はどちらも伸び悩む。調査からは学校外でのスポーツの経験の差も勉強面にも影響を及ぼしている事実が浮かび上がってきました。

また、とくに母親がスポーツをしているかどうかや、親の地域社会との関わり方も運動能力の高低に連動しているとしています。この他にも低体力の子どもの家庭環境として、以下のことを指摘しています。

  • 世帯収入が低く学校外の教育やスポーツへの投資が低い
  • 子どもに対する学歴期待度が低い
  • 子どものスポーツに対する期待が低く子どもとスポーツをしたり観戦する機会が少ない

全体的に「運動能力は天性のもの」とは言い切れない結果となりました