FIP治療の「最前線」
残念ながら現在の獣医療でも猫伝染性腹膜炎に対する有効な治療法は確立されておらず、その治療の中心は対症療法です。
対症療法とは根本的な病気の治療が難しい場合にせめて症状を和らげてあげる目的の処置で、一般的には炎症を抑えるためにステロイドや抗ウイルス効果を期待してインターフェロンなどを使用します。
また炎症により腹水や胸水が溜まることがあるので液体の圧迫で苦しくなるようであれば針を刺して抜去することもあります。ですがここまでしてもやはり完治はせずそのまま亡くなってしまいます。
そんな暗い状況の中、近年になり“MUTIAN(ムティアン)”という海外のサプリメントが猫伝染性腹膜炎に効果があると話題となっています。これについては賛否が非常に分かれておりますが、獣医療サイドとしては否定的な考えが多いのが現状です。
その理由として非常に高額なことや、日本国内で承認が得られていないことが挙げられますが、一番は猫伝染性腹膜炎を発症した猫に投与を行なってきちんと評価された研究や報告が一切なくエビデンスがないということが大きな要因です。
もしMUTIANが本当に効果を示すものであれば今後国内でも研究が進みデータが蓄積され、医薬品としての承認も期待できるでしょう。しかし現時点では猫伝染性腹膜炎の治療薬としては期待するのは時期尚早だと考えます。
一方、国内では北里大学や日本獣医生命科学大学で抗TNF-α抗体、シクロスポリンAといった医薬品を応用しての治療法が研究されており、有効な治療法が確立されることを願うばかりです。
参考資料
「レイクタウンねこ診療所」 長谷川 諒