日米首脳会談では、自動車問題が確実に議題に

2月10日には、米国のワシントンで日米首脳会談が開かれます。米トランプ大統領は、選挙期間中から日本などとの間に貿易不均衡があると問題視してきました。特に、自動車貿易については「不公平」と、日本を名指しで批判しています。

2016年の米国の対日貿易赤字は約689億ドルで、中国に次ぐ2位の規模です。その大半は自動車が占めており、526億ドルとなっています。対日貿易赤字の8割弱が自動車ということになります。

トランプ大統領は、日本が米国製の車を締め出していると言っていますが、関税に関して言えば、日本はすでに輸入車の関税を撤廃しており、輸入関税はゼロ%です。一方で、米国は日本からの輸入乗用車に2.5%を課しています。

ただし、日本は輸入時の認証や安全基準などが欧米より厳しく、これが障害になっていると米国や欧州のメーカーは主張しています。日本独自の規格である軽自動車についても優遇措置の廃止などを求めています。

今回の日米首脳会談でも自動車問題が確実に議題になると見られています。トランプ大統領はさらに、日米の2国間自由貿易協定(FTA)交渉を迫ってくる可能性もあります。関税の撤廃・削減を定めるものですが、FTAが締結された場合、コメなど、日本の農産物がかなり不利になるとされています。

「ビッグ3」も米国側の要望を主張

自動車に話を戻しましょう。トランプ大統領が「日本が米国製の車を締め出している」と言う、その米国製の自動車のブランドをどれだけ知っているでしょうか。

ざっと挙げるだけでも、クライスラー、ダッジ、ジープ、フォード、リンカーン、シボレー、ビュイック、ポンティアック、サターン、キャデラックなどが浮かびます。

ただし、これらのほとんどは、米国ビッグ3と呼ばれる、「ゼネラル・モーターズ(GM)」、「フォード・モーター)」、「フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)」のブランドです。

この3社は米自動車貿易政策評議会(AAPC)という業界団体をつくっており、今回の日米首脳会談でも、米国側の要望を主張すると考えられています。先月24日には、トランプ大統領はホワイトハウスでビッグ3の経営トップと会談しています。

米国にはこのほか、トラックやバス、スポーツカーの専業メーカーが数多くあります。中でも最近注目されているのが、電気自動車(EV)メーカー大手のテスラです。今月2月にテスラモーターズから社名を変更しました。エネルギー関連など事業拡大を図っています。

自動車メーカーはまだまだトランプ大統領の発言に翻弄されそう

ちなみにトランプ大統領の発言などから、「米国製の自動車は米国内でもじり貧なのか」と考える人もいるかもしれませんが、実際はそうではありません。米国の調査会社オートデータ社は1月、2016年の米国新車販売の結果を公表しました。総販売台数は1,755万351台で、7年連続で前年実績を上回っています。

販売台数首位だったのはGMで304万2,421台でした。2位はフォード・モーターで259万9,211台、3位はトヨタで244万9,587台ですが、4位はFCAで224万4,315台です。米国ビッグ3がしっかりと上位をキープしています。

日米首脳会談では、日本市場の開放が求められると考えられますが、それによって米国製自動車が急に日本でシェアを伸ばすとは考えにくいところです。当面は、米国での生産や雇用増のほか、メキシコへの投資見送りを要求するでしょう。

北米自由貿易協定(NAFTA)見直しを打ち出していることから、トヨタや日産の生産拠点であるメキシコからの輸出に影響も出そうです。

日本車各社のみならず、米国内ビッグ3も、米国での現地生産の拡大を求められています。トヨタは今月、米国に今後5年間で1兆円を投資すると発表しました。自動車メーカーはまだまだトランプ氏の発言に翻弄されそうです。

 

下原 一晃