贈与と相続の違い3.何度もできる贈与、一度きりの相続

ここまでの説明で「生前贈与すると税金が高くつくから、相続まで待つべし。」と思われたと思います。税額だけを考えればほぼ正解です。

ただし、一度きりの相続と異なり、贈与は何度もできます。そこに着目し、相続税の基礎控除を超える場合には、贈与と組み合わせることでより節税できる場合があります。

例えば、父が既に他界しており、母・長女・長男の3人家族で、母が亡くなった場合を想定します。単純化するため、母の遺産総額が現金で8000万円だったとします。

この場合、基礎控除は3000万円+600万円×2=4200万円ですので、8000万円-4200万円=3800万円が相続税の対象となり、その税額は3800万円×20%-200万円=560万円です。

これに対し、母が生前に長男と長女に毎年110万円ずつ贈与していた場合どうなるでしょうか。母が70歳になる年から贈与を開始し、85歳で亡くなった場合を想定します。

相続開始前3年以内の生前贈与は、相続税の計算時に相続財産に加算されてしまいますので、70歳になる年~82歳になる年の13年分が対象となります。

110万円×2人×13年=2860万円ですので、相続時の母の財産は8000万円-2860万円=5140万円となり、5140万円-4200万円=940万円ですので、相続税は940万円×10%=94万円となります。

このように、贈与と組み合わせると、560万円-94万円=446万円もお得になることがわかりました。