クリスマス、年末を皆様はどのようにお過ごしでしょうか。きっと慌ただしい日常を離れて静かに過ごしたいという方もいらっしゃることかと思います。
そのような過ごし方を考えているあなたに、今回は「お金と人生の本質」に関するお話を2つお届けします。
オー・ヘンリー『賢者の贈り物』
クリスマスに関連するお話としては、オー・ヘンリーの『賢者の贈り物』が有名です。もしかすると既にご存知の方もいらっしゃるかもしれません。あらすじは、以下のとおりです。
お金のない貧しい夫婦がおりました。クリスマスに、妻のデラは自分の大切な髪を売って、夫のジムが大切にしている金時計に合うチェーンを購入しました。
一方、夫のジムはそうとは知らず自分の宝物の金時計を売り、妻が欲しがっていた櫛を購入していました。自宅で二人はお互いに驚きながらプレゼントを交換し、それを使える時が来るまで、閉まっておくことにしました。
作者のオー・ヘンリーは物語の結末で、「この一見愚かな行き違いは、しかし、最も賢明な行為であった」と結んでいます。
この物語の主題は、相手のために自らの宝物を犠牲にするという夫婦間の愛情です。結果的に夫婦がそれぞれ手にしたプレゼントはすぐには使えない物でしたが、二人はお互いの愛情確認と忘れられない思い出というお金で買うことのできない価値を獲得しました。
現実同様、この物語でお金は価値を媒介するものとして描かれています。妻のデラの髪の毛や、夫のジムの金時計は一度お金に換えられ、その後そのお金がプレゼントへ換えられます。
ここで立ち止まって考えたいのは、「はたしてお金は正しく価値を代替しているか?」という点です。妻のデラの髪の毛や夫のジムの金時計は、本人や伴侶にとっておそらく売れた金額以上の価値があるものだったでしょう。
また、夫婦が手にしたプレゼントは、その購入に必要だった金額以上に価値のあるものだったのではないでしょうか。金額とは市場価格、つまり他の人がどのくらい欲しいかを表すだけであり、私たちが持つ主観の価値を表すものではないのです。
「メキシコの漁師とMBAのコンサルタント」
お金に関するもう一つのお話としては、MBA資格を持つコンサルタントに対して皮肉をたっぷり込めたものが有名です。
あるメキシコの海岸沿いの小さな村を、MBA資格を持つコンサルタントが訪れました。
昼前に仕事を終えて帰ろうとする漁師に、コンサルタントは、「もっと働いてもっと稼ぎ、大きな船を買い、人を雇い、どんどん利益と組織を大きくし、IPO(※)をして巨万の富を獲得するのが良いですよ!」とアドバイスしました。
漁師が「その後どうするのですか?」と問うと、コンサルタントは「悠々自適の生活や家族団らんができます!」と答えます。漁師はそれを聞いて、「そんな生活はもうとっくに手に入れていますよ・・・」と呆れました。
※IPOとは、”Initial Public Offering”の略で、未上場企業が、新規に株式を証券取引所に上場し、投資家に株式を取得させること。
このお話の主題は、資本主義への皮肉であり、「お金を稼ぐことは手段、巨万の富は結果であって目的ではない」ということです。
資本主義は、資本家の飽くなき利益の追求を原動力としている経済体制です。これを前提にするなら、コンサルタントが漁師に提案した資本家になることの勧めは至極正しいといえます。
しかし、現状に満足している漁師にはこの考え方が馴染まないわけです。
結び
ともすると私たちは「生きるためにはお金が必要で、そのために働いている」、「お金はあればあるほど良い」と考えがちです。もちろん、お金がなければ生活必需品を買うことはできません。
また、お金はあればあるほど様々なサービスを享受でき、たくさんの商品を購入できることに違いはないでしょう。しかし、そのために体調を崩してしまったり、人間関係や衣食住をないがしろにしたりしてしまっては本末転倒です。
「何にいくら必要なのか」、「何のためにお金が必要なのか」、「お金がなければできないことなのか」、「自分にとって本当に大切なものは何か」、聖なる夜から年末にかけて静かに過ごしたいあなたはどうお答えになるでしょうか。
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