「老後の資金はいくら必要?」まずは目安額を把握しよう!

ここまで、国民年金(基礎年金)と厚生年金の平均受給額と実態について検証してきました。老後にもらえる年金額は人それぞれですね。

では、「老後の資金」をどの程度準備すれば安心できそうか、計算の目安などはあるでしょうか。

ここで触れたいのが、2019年に話題となった「老後2000万円問題」。夫婦の暮らしには、公的年金以外に2000万円の老後資金が必要である、という説が注目を集めましたね。図でイメージしていただけるかと思います。

「老後2000万円問題」を分かりやすく分解!

ただしこれは、「夫・厚生年金、妻・基礎年金」の、モデル世帯による試算……。


試算のモデルケースとなった夫婦世帯の実収入約21万円のうち、社会保障給付(主に年金)は約19万円です。ただし、これは「夫が厚生年金、妻が基礎年金のみ」を受給する世帯を想定しています。

よって、「夫婦ともに基礎年金(満額)を受けとる世帯」を想定すると、ひと月の社会保障給付額は約13万円。さらにひと月の赤字額は11万円を超える計算に。これが25年間続いた場合、単純計算するとトータルで3300万円を超えますね。

なお、この試算にはいくつかの注意点があります。

【1】介護費用が含まれていない

試算中では、実支出の内訳に「介護に必要となる費用」がまったく含まれていません。要介護度や家族の状況により、介護費用には個人差・世帯差がでるでしょう。

生命保険文化センターの調査では、公的介護保険サービスの自己負担費用を含めた「介護費用」は、介護用ベッド購入や住宅費用などの「一時費用」合計が平均69万円。ひと月の費用平均は7万8000円とされます。

介護施設に入居する場合には、さらに大きな出費となりますね。LIFULL介護のデータをもとに、5年間(平均的な入居期間)にかかる費用を計算すると、1900万円強に。

もちろん、地域差や施設の内容によっても差があることも念頭におく必要がありますね。

【2】 住居費が1万3656円で計算されている

家計調査の結果では、持家世帯を前提として住居費が約1万4000円に設定されています。老後も賃貸住まいを続ける場合は、家賃との差額を上乗せして準備していく必要があるわけです。

【3】実際の収入・支出は世帯ごとに違う

これは老後に限った話ではありませんが、ライフスタイルによって暮らしに必要となるお金は変わってきますね。趣味や家族構成によっても差がつきやすい部分でしょう。

シニア世代であれば、そこに「健康状態」をプラスして考慮すておきたいところですね。必要となる金額は人それぞれ。「いくら準備しておけば大丈夫」という正解はないわけです。

厚生年金を受給する予定の方も含め、まずは「ご自身が受け取る年金額の見込み」と「いまの生活費」を把握するところから始めましょう。その差を「見える化」することで、老後までの資金計画は立てやすくなるでしょう。