2月1日に発表されたインドの2017年度予算案は、ほぼ事前に予想されていた通りで、市場を動かすような目新しい材料はなかったものの、安心感を与える内容でした。株式市場では株式投資への優遇税制を維持したことが好感され、1日(水)のSENSEX指数は前日比+1.8%上昇しましたが、債券市場、通貨ルピーは小動きでした。

経済成長と財政規律のバランス

2017年度の歳出総額は前年度比7%増の21兆ルピー(約35兆円)とし、農村向けに予算を重点配分しバランスの取れた高成長を志向する一方、財政規律を堅持する内容でした。

政府は2017年度の成長率見通しを+6.75%~7.50%(2016年度見込みは+7.1%)とし、引き続き高成長路線を志向しています。一方、2017年度の財政赤字の対国内総生産(GDP)比を3.2%とし、2016年度見込みの3.5%からの赤字圧縮を明確化。また、2018年度は3.0%とし、引続き財政規律を重視する計画となっています。

成長の柱(1)農村へ予算を重点配分

政府は農村支援強化のため、農村向けの歳出を前年度比24%増やしました。農村向け貸出の拡充、農産物保険の普及、灌漑(かんがい)農地拡大などを通じて、今後5年間で農村所得の倍増を目指しています。13億人の人口の約7割は農村に居住していることから、農村向けに予算を重点配分することにより個人消費への波及効果が期待できると見られます。

成長の柱(2)インフラ整備に積極投資

インフラ整備は引き続き優先課題であり、政府は2017年度に鉄道、空港、道路の建設・近代化に過去最高の3兆9,600億ルピー(約6.6兆円)を投資する計画です。また、官民パートナーシップ(PPP)により民間の資金やノウハウを活用する方針です。

減税効果

2017年度の予算案では、所得税の一部引き下げも盛り込んでいます。貧困対策の一環として、年収25万~50万ルピー(約42万~84万円)の所得層の所得税を10%から5%に引き下げ、25万ルピー以下は所得税免除としました。法人税は、30%から25%に段階的な引き下げを継続して実施する計画です。

引続きインド株式・債券市場に強気の見方

HSBCグローバル・アセット・マネジメントでは、引続きインド株式・債券ともに強気な見方を維持しています。農村の所得増加による個人消費の拡大、インフラ整備関連への積極的な投資が、中期的にインドの経済成長を牽引すると考えています。

短期的には、2月8日のインド準備銀行(中央銀行)の金融政策決定会合が注目されますが、金融緩和姿勢に変わりはないと見ています。ここでは、政策金利が0.25%引き下げられ6.0%になると当社では予想しています。