急遽、社長が参加した決算説明会

2017年1月30日の午後3時過ぎ、NEC(6701)から決算説明会の出席者変更のお知らせが一斉メールで届きました。

内容は、当日の決算説明会での登壇者が川島勇取締役執行役員常務兼CFOに加え、新野隆代表取締役執行役員社長兼CEOも加わるという内容でした。

財務役員が取り仕切る予定の決算説明会に、急遽、社長も加わるという変更が行われるのは決して稀なことでありませんが、そうしたことは大概、経営上の重大な変化が生じた場合に多く行われます。社長が説明するということは、決算内容以外の経営上の問題等の説明が行われる場合が多いためです。

また、こうしたことは良くないニュースが発表される時のほうが多いという印象が筆者にはあります。そのため、このメールを読んだ瞬間、“多分、相当悪いんだろうな”という予感を持ちましたが、実際に決算短信を確認すると、その予感通り非常に厳しい内容でした。

増収・増益予想から一転、減収・減益予想を発表

既に決算内容をご存知の方もいらっしゃると思いますが、内容を簡単にまとめてみます。まず、2017年3月期Q3(4-12月期)累計の実績では、売上収益は対前年同期比▲8%減、営業利益及び親会社の所有者に帰属する四半期純利益(以下、純利益)は赤字転落となっています。

セグメント別営業利益は、「エンタープライズ」のみが対前年同期比で増益となり、それ以外の全セグメントが減益となっています。

また、直近四半期のQ3(10-12月期)だけを見ると営業損益は赤字転落、また、全てのセグメントが減益となっています。Q2(7-9月期)の営業損益は黒字で増益であったことから、これは大きなサプライズです。

会見で新野社長は、「10月、11月はほぼ想定通りだったが、12月に大きく悪化した」とコメントしており、社内的にも大きな驚きであったことが伺えます。

ちなみに、会社側では、Q3(10-12月)実績の営業利益は、宇宙事業の採算性悪化、サーバーの価格競争激化、保守サービスの収益性悪化等により、10月31日時点での社内見通しに対して▲290億円の下振れになったとコメントしています。

一方、通期会社予想については、上述のQ3時点での悪化要因に加え、大型案件の失注等も加わり、従来予想比で売上高が▲2,000億円、営業損益が▲700億円、純利益が▲300億円という大幅な下方修正が発表されました。

この結果、前回予想では増収・増益であった通期予想は、一転して減収・減益予想となっています。

31日の株価は大幅下落

こうした決算内容を受けた翌日31日のNECの株価は大幅安で始まり、前場では一時、前日比▲58円安(▲18%)の258円まで売り込まれる場面もありました。

下方修正発表ですから売られることは当然だとしても、これだけの大幅安となったのはなぜでしょうか。

その1つの理由としては、3か月前のQ2 決算時点では円高等により同業他社の下方修正が相次ぐ中でNECは通期予想を据え置いたため、短期業績に対する警戒感が小さかったことが推測されます。

また、下方修正の要因が「円高」などわかりやすい特定の外部要因ではなく、NECが得意とする市場の縮小など複雑な構造要因に起因していることも投資家心理を悪化させた要因ではないかとも推察されます。

財務的には危機的な状態ではないが、放置すれば長期停滞のリスクも

ちなみに、2016年12月末時点での株主資本比率は30%と財政状態はなお健全な状態にあるため、業績予想は下方修正されたものの、配当予想は据え置かれています。

ただし、収益性が悪化している宇宙関連、通信機器、国内保守サービス、スマートエネルギー関連を早期に立て直すことができず、また、新規事業の育成を実現することができなければ、長期停滞の懸念も頭をもたげてくるでしょう。

いずれにせよ、今後の収益改善策に向けた実行力に注目していきたいと思います。

NECの過去10年間の株価推移

和泉 美治