以上、景気と企業収益について記してきました。景気と株価の関係については別の機会に詳述しますが、企業の増益率と人々の景況感にズレが生じることが株価にも影響するはずです。

期待していなかった時に大幅な増益決算が発表され、期待していた時の決算が小幅な増益にとどまるとすれば、投資家にとってサプライズとなるからです。

労働分配率は企業収益とほぼ逆相関

以下は余談ですが、景気が回復して売り上げが増えても、人件費はそれほど増えないので、労働分配率は下がります。これを「労働分配率が下がってしまった」などと否定的に捉える必要はありません。賃金総額が減っているわけではなく、割り算の分母である利益が増えただけですから。

反対に、景気が後退しても人件費はそれほど減らないので、労働分配率は上がります。これは喜べませんね。

労働分配率の長期的推移が上昇することが望ましいのか悲しむべきことなのかは、労働組合と企業との力関係などによるのでしょうが、短期的には景気の変動に大きく影響されるので、不用意に喜んだり悲しんだりしないように気をつけたいものです。

本稿は、以上です。なお、本稿は筆者の個人的な見解であり、筆者の属する組織その他の見解ではありません。また、厳密さより理解の容易さを優先しているため、細部が事実と異なる場合があります。ご了承ください。

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塚崎 公義