景気の谷より前に収益が回復し始める場合も

景気が谷を迎える直前には、実は企業収益は回復を始めているかもしれません。売上の減少は緩やかになっているでしょうから、借入金利の減少等々により利益が増えることも考え得るからです。

景気の谷付近では、企業は設備投資をしませんから、減価償却によって発生するキャッシュフローは借金の返済に使われます。つまり、借金の残高が減っていくわけです。それは当然、支払い金利の減少に直結します。

金利水準も下がっていくかもしれません。一つは、過去の金利の高い時に借りた借金が返済し終わる可能性です。減価償却分だけ過去に借りた金利の高い借金を返していけば、残りは最近借りた金利の安い借金のウエイトが高まるはずです。

新規借入金利自体も、下がるかもしれません。景気のボトム付近では、追加的な金融緩和によって市場金利が下がる可能性もありますし、銀行間の貸出競争によって貸出金利が下がる可能性もありますから。

減価償却費も減るかもしれません。不況期には設備投資が行われないので、古い設備の減価償却が終わっていけば、その分だけ減価償却総額が減るからです。定率法が採用されていれば、それも毎期の減価償却が減っていく要因となるでしょう。

原材料費も、好況期に仕入れた高い原材料が使い終わり、不況期に仕入れた安い原材料を使うようになれば、減っていくかもしれません。

景気の山直前の増益率は小さい

景気の山が近づいてくる頃には、景気は絶好調と呼べる状況になるかもしれませんが、増益率は決して高くないと言えそうです。最大の要因は、前期の利益もそれなりに大きいため、増益率で見るとそれほど大きくならないということです。

増益額自体も、それほど増えないかもしれません。景気がピーク付近になると、原材料費は上がり、人件費も上がり、支払い金利も上がるでしょう。一方で、設備稼働率が上がってくると増産が難しく、割増賃金等を払って無理して増産すればコスト増になりますし、増産を諦めれば売り上げが増やせないからです。