トランプ氏の大統領演説は保護主義に終始したが、イベント通過に期待
2017年1月20日の東京株式市場で、日経平均株価の終値は、前日より65円66銭高の19,137円91銭となりました。日本時間21日未明に、トランプ氏の大統領就任式が行われることから、今週は様子見ムードでした。
一方で、トランプ氏の発言に市場が揺れる展開もありました。17日付けの米紙のインタビューで「ドルが強すぎる。米企業は価格競争ができない」と発言したと伝えられると、ドルを売って円を買う動きが強まり、外国為替市場では一時、1ドル=112円台後半まで上昇しました。
ただし、19日には、次期米財務長官に指名された米ゴールドマン・サックス元幹部のスティーブン・ムニューチン氏が、上院委員会の承認公聴会で「長期的には強いドルが重要」と主張して、トランプ発言の火消しを行ったこともあり、円は20日には再度、一時115円台まで下がる場面もありました。
第45代米大統領に就いたトランプ氏の就任演説が20日(日本時間21日未明)に行われました。内容は、「米国第一主義」を繰り返す、選挙戦から掲げていたような保護主義的なものでした。ワシントンではトランプ氏の大統領就任に対する抗議デモも行われ、一部が暴徒化しました。
ただし、雇用の創出を重視していることや減税、規制緩和などを期待する声もあります。20日の米株式市場で、ダウ工業株30種平均は6営業日ぶりに反発し、前日比94ドル高の19,827ドルとなりました。
来週の動きはどうなるでしょうか。市場は、トランプ氏の発言に振り回されている印象もありますが、まずはイベント通過の安心感から様子見ムードも終わり、下値が固まってくるのではないかと思われます。
日本では来週から2017年3月期の第3四半期の決算が相次いで発表されてきます。第2四半期以降、円安・ドル高が進行していることから、業績の上方修正にも期待できそうです。個別の銘柄を物色する動きから、相場も買い優勢になるのではないでしょうか。
25日移動平均線を下回り、足元では下降トレンドへ
今週の動きをテクニカル面から見てみましょう。ポイントの一つは、25日移動平均線を終値ベースで下回ったことです。さらに、直近の安値である12月30日の安値(18,991円)よりも下がると、今度はこのあたりで上値を押さえられました。
短期的なチャートの形としては、直近の高値である1月5日の高値(19,615円)から下降トレンドが形成されたことになります。心理的な節となる18,500円、さらには75日移動平均線までの下落も想定されました。
19,000円台を回復、調整を終えて戻りを試す展開か
来週の動きはどうなるでしょうか。チャートの形はいくつか明るい兆しが見えます。一つは、一時は下回っていた5日移動平均線を終値ベースで超えてきたことです。
心理的な節となる19,000円台も回復しました。一時、上値抵抗線になると見られた昨年12月30日の安値(18,991円)も超えてきています。足元で上昇トレンドに転じるためには、まずはこの18,991円や19,000円でサポートされることが必須条件です。さらに、長期間上昇トレンドを支えてきた25日移動平均線である19,280円あたりを上回るようであれば、目線を上に持つことができます。
今週のイベント通過の安心感から、来週は週初から反発することも期待できます。25日移動平均線を超えることができれば、19,500円や1月5日の高値(19,615円)超えまでは比較的容易に上昇しそうです。
ただし、トランプ新政権は不確定要素も少なくないことから、安易に飛びつくのはリスクもあります。下値のサポートを確認してから出動しても遅くはないでしょう。
下原 一晃