老後の生活を支える柱となる「年金」。

将来の受給見込み額や、年金を増やす方法などの情報には触れることが多いのですが、実際に年金をもらう「手続き」について意識されたことはありますか?

年金は完全に「申請主義」です。「65歳になったから勝手に振り込まれる」というものではありません。

自分から請求手続きをしないと受給できないことは、実は意外に知られていなかったりします。

そして、その手続きには「時効がある」ということも、これまた盲点です。現役時代にコツコツと年金保険料を支払ってきたのですから、しっかり受給したいものですね。

そこで本日はFPの資格をもつ私から、65歳の年金受給開始前にチェックしておきたい年金受給までの流れと時効、また「65歳より前」に年金を受け取り始める制度などについても触れていきます。

年金受給の流れと5年の時効

年金を受け取るためには、まず「年金請求書」の提出が必要です。

「うっかりミス」で提出を忘れてしまう方もなかにはいらっしゃるでしょう。この場合、受給の権利が発生した時から5年を経過すると「時効」となります。その分の年金は受給できなくなってしまいますので、じゅうぶん注意が必要です。

65歳の受給年齢に達し受給権が発生する方には「受給開始年齢に達する3カ月前」に日本年金機構から「年金請求書」が郵送されてきます。

年金請求書には年金加入記録が記載されており、記録内容に不備や不明点があったときは、お近くの年金事務所に問い合わせましょう。

受け取った請求書の内容に問題なければ、年金請求書に必要事項を記入し、受給開始年齢の誕生日の前日以降に年金事務所に添付書類(住民票など)とともに年金事務所へ提出します。

年金請求書を提出した1~2カ月後に年金証書・年金決定通知書が届き、さらに1~2カ月後に、年金支払のご案内(年金振込通知書・年金決定通知書または年金送金通知書)が届きます。晴れて年金の受け取り開始です。ちなみに年金は「偶数月の15日」です。15日が、土・日・祝日にあたる場合は、その直前の平日になります。

年金は「65歳より前」の受給もできる!

さて、ここまでは65歳から年金を受け取る手続きについてご紹介しました。老齢年金の受給は「原則65歳」です。

……「原則65歳」というと?

実は老齢年金の受給スタートの時期は「60歳から70歳までの間」でずらすことができます。それが、本来65歳からの受給開始を前倒しで受け取る「繰上げ受給」、66歳以降に後ろ倒しで受け取る「繰下げ受給」の制度によるものです。

繰上げ受給=「前倒し」

年金保険料の納付は原則60歳までですが、年金を受給できるのは原則65歳から。となると、60歳から65歳になるまでの間、年金を受け取れない期間が発生します。これを「待機期間」と呼びます。

お勤め先の定年が60歳だった場合、65歳までの生活費に不安を感じるご家庭は少なくないでしょう。パートタイムなどで仕事をペースダウンしながら就業を続ける方も多いでしょう。

とはいえ、家庭の事情や体力面などで「就業」という選択肢がない方もいらっしゃるはずです。

そんなケースで検討できる制度が老齢年金の「繰上げ受給」です。希望すれば60歳から65歳になるまでの間でも前倒しで年金を受け取ることができます。ただし、繰上げ受給の請求をした時点に応じて年金額が減ります。

グラフで減額率のイメージをつかんでみてください。

「繰上げ受給」の減額率のイメージ1/2

減額率は「0.5%×前倒しした月数」

また、その減額率は一生変わりません。本来の受給開始年齢である65歳で年金額が元に戻るわけではない点には、十分注意が必要です。ちなみに、60歳0カ月の減額率は30%です。活用を検討する場合は慎重に考えていく必要がありそうです。

※繰上げ受給の1カ月あたりの減額率は0.5%ですが、2022年4月から0.4%に緩和される予定です。

受給を遅らせて「年金額が最大4割増える」方法も

逆に年金には「繰下げ受給」という制度もあります。

繰り下げ受給は65歳時点で年金の請求をせず、66歳以降70歳までの間で申し出た時から繰り下げて請求が可能です。また、2022年4月からは、その上限が75歳にまで拡大されます。ひと月あたりの増額率は0.7%です。

繰下げ受給=「後倒し」

こちらも、グラフで増額率のイメージをつかんでみましょう。

「繰下げ受給」増額率のイメージ2/2

70歳まで繰下げると42%も年金額が上がる!

70歳までの5年間(60カ月)繰下げた場合は42%、さらに75歳までの10年間(120カ月)繰下げた場合は84%、年金が増額されるということになります。

非常に「お得」な制度ではありますが、やはり受給スタートまでのやりくりをどうするか、さらにいうと「そもそも何歳まで生きられるのか」という部分がボトルネックとなるでしょう。

「繰下げ受給」と「繰上げ受給」実際にしている人はどのくらいいるの?

では、実際に繰り下げや繰り上げ受給している人の割合を見てみましょう。

厚生労働省年金局「令和元年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」の表27「国民年金 70歳の繰上げ・繰下げ受給状況の推移」から確認しました。(基礎年金のみ受給者の場合)

繰上げ(年金を前倒しで受給)

  • 平成27年度:22.0%
  • 平成28年度:20.5%
  • 平成29年度:19.7%
  • 平成30年度:18.8%
  • 令和元年度:17.6%

繰下げ(年金を後ろ倒しで受給)

  • 平成27年度:1.5%
  • 平成28年度:1.4%
  • 平成29年度:1.5%
  • 平成30年度:1.7%
  • 令和元年度:2.2%

「基礎年金(国民年金)のみ」を受給する人では、繰下げ受給よりも、繰上げ受給をする人の割合のほうが大幅に多いことが分かります。

特に自営業やフリーランスなど国民年金の受給権のみという場合は、公的年金以外の老後資金を、しっかりと準備しておく必要がありそうですね。

「年金だけでは不安…」どう対策する?

2019年に「老後2000万円問題」が話題となったことをきっかけに、リタイヤ後の暮らしとお金に不安を持たれ、何らかの老後資金対策を検討される方は多くなってきました。

いくら貯めればよいかはもちろん人それぞれですが、具体的な対策方法としては、先取貯蓄を念頭に、その一部を資産運用に回すしくみを作っていただくことも有効な手の一つといえるでしょう。つまり「積立式で資産運用を続けていく」いう発想です。

老後資金の準備で知りたいこと、不安なことがある人は、まずは情報収集から!雑誌やインターネットのマネーサイト、そしてマネーセミナーなどを活用しながら、自分にあった「お金の育て方」を見つけていきましょう。

参考資料