会社員・公務員が加入する「厚生年金保険」の前身である労働者年金保険制度は昭和17年(1942年)に発足しましたが、当初の対象は「男子のみ」でした。

その2年後(1944年)に労働者年金保険は「厚生年金保険」に名称を変更。ここで初めて、男女ともに対象となったのです。

女性が厚生年金保険の対象になってから77年後のいま、厚生年金の「受給額」にはかなりの男女差があることを、みなさんはご存知でしょうか。

今回は、この厚生年金の男女差についてのお話です。大手都市銀行にて17年間、個人の資産運用コンサルティングに従事した筆者が解説して参ります。

年金制度のしくみを整理!

まずは公的年金のしくみから確認していきましょう。日本の公的年金制度は「2階建て構造」などと呼ばれます。

日本の公的年金制度のしくみ

「2階建て部分」が厚生年金

1階部分「国民年金」:日本国内に住む20歳以上60歳未満の全員が加入している国民年金
2階部分「厚生年金」:会社員や公務員などが、「国民年金」に上乗せして加入

この2つの制度のうち、今回は「2階部分」に当たる厚生年金についてお話していきます。

厚生年金「受給額の計算方法」

厚生年金に加入していた人は、老後に「老齢基礎年金」に上乗せして「老齢厚生年金」を受け取ります。2021年度の老齢基礎年金の満額(40年間保険料を納めた場合に受け取れる額)は、6万5075円。

また、平均年金月額は5万5946円(厚生労働省年金局「令和元年度厚生年金・国民年金事業年報」)で、男性の平均月額は5万8866円、女性の平均額は5万3699円です。

この「老齢基礎年金」に上乗せして受け取る「老齢厚生年金」の受給額の計算方法(65歳以上)は、以下の通りです。

老齢厚生年金の受給額=報酬比例年金額+経過的加算+加給年金額


この「報酬比例年金額」部分は、「平均標準報酬月額」および「平均標準報酬額」に生年月日に応じた率(乗率)と加入月額を掛けて算出します。ここにさらに、最近の賃金水準や物価水準で再評価するために「再評価率」を乗じて求められます。

経過的加算・加給年金額は人それぞれになるため、「ねんきんネット」や「ねんきん定期便」でチェックしましょう。

次では、厚生年金の受給額事情を詳しく見ていきます。