実は非現実的な「45歳定年制」

もともと45歳定年制は非現実的な話です。日本では法律上、定年年齢は60歳を下回ることはできません。仮に、ある企業が45歳定年制を実施し、45歳を過ぎた社員を強制的に解雇すれば「解雇権濫用法理」(労働契約法16条)に抵触します。

さらに、定年延長が世界的な流れです。日本でも高年齢者雇用安定法による65歳定年制が、2025年4月からすべての企業の義務になります。

これは、厚生年金の支給開始年齢が2013年から3年ごとに1歳ずつ引き上げられており、2025年に65歳になるのと同タイミングです※。世界的に見ても、年金受給年齢の引き上げとリンクして定年延長を進めている国もあります。

※男子の場合。女子は2018年度から3年に1歳ずつ12年かけて65歳へ引上げ。

この辺の事情を新浪氏が知らないわけはないので、今回の発言は確信犯的な炎上狙いのような気もしますね。では、そこまでして、新浪氏はなにを伝えたかったのか。

新浪氏の発言から。「45歳は(人生の)節目。スタートアップ(への転職)とか、社会がいろいろな選択肢を提供できる仕組みが必要だ」。さらに現在の社会保障制度にも言及。「現制度は1970年代の高度成長期に基づいた制度だ」と主張しています。

たしかに、日本の現役世代の社会保障は企業が肩代わりしている側面があります。昭和の時代には“社宅"なるものも存在し、企業が社員の面倒をみるという面が多分にありました(いまでも借り上げ社宅は存在しますが)。

日本の場合、こうしたことが社員の企業への依存心を過剰に高めている面もあるのかもしれません。