部下から上がってきた企画がイマイチ……
もっと有能な企画者はいないものか……

 こんな風に感じたことはありませんか? 実は企画が成功するためには、企画者だけでなく、上司あるいは企画の発注者など「企画を受け取る側」にも重要な役割があるのです。

 この記事では、拙著『企画――「いい企画」なんて存在しない』より、そんな悩みを解決する「企画者との付き合い方」についてお伝えします。

企画は「好き嫌い」で選んでもよい

 まず認識していただきたいことは、企画は共同作業だということ。「企画は部下の仕事だから」「お金を払っているから」と受け身になりすぎず、「企画者から最大のパフォーマンスを引き出そう」という姿勢で臨んでください。

 その上で、最初に行わなければならないことは、「全レイヤーの目的を企画者と共有すること」です。

 たとえば、ひと口に「バズる新商品企画」と言っても、「自社のオンラインサービスの認知を広げたくてバズらせたい」のか、「長い間、会社を支える売上の柱を作りたい」のか、上位にある目的によって、企画の方向性は変わりますよね。こうした「上位の目的」が共有できていないと、提案してほしい企画と異なるものが集まってしまいます。

 また、一方で下位の目的が共有されていない場合も注意が必要です。目的としては「会社のイメージアップのため」と言いつつ、売上が上がらないと「こんなはずじゃ……」と不満に感じる、ということはありませんか? これは、「企画者に伝えた目的よりも下位の目的」が存在していたから起こることなのです。

 次にしてほしいことは、「自分の頭に企画のイメージが浮かぶまで、企画者に問い続ける」、そして「目的に対して根拠を持って企画したか確認する」ということです。確認を続けると、企画者が企画の目的をどの粒度で把握していて、どういうロジックで達成させようとしているのかがクリアになってきます。

 そして最終的には「好きな企画」を選ぶことをお薦めします。企画は、受け取る側のモチベーションによっても成功確率が変わります。企画しては「ロジックの積み上げでハズす確率を下げること」はできますが、確実に当てるようなことはできません。ですから「好き嫌い」で選ぶことには合理性があるのです。

 企画を通すということは、自分の命運を企画に委ねるということです。成功すれば手柄になりますし、失敗したら責任を負わされるケースもあるでしょう。「好き嫌い」も含めて、その企画に対して自分が「責任が取れるか」という視点が重要です。

「昔やったから」は最悪。次につながる企画の断り方とは

 企画を不採用にする時・断る時についても、いくつか注意点があります。

 まず大事なのは、「断る理由をハッキリさせる」ということです。特に、断る理由がロジックによるものなのか、主観によるものなのかは必ずハッキリさせなければいけません。

 理由がロジックで説明できる場合は、端的に伝えてあげてください。気をつけたいのは、主観による理由で断る場合です。企画の判断に好き嫌いは当たり前にあります。「理由はない」「嫌い」など「主観で判断している」ということを明確にしたほうがいいでしょう。無理やりロジックで断ると、「その部分を解決すればOK」と受け取られてしまうこともあるからです。

 それから、「相手のためになるような断り方」をしましょう。育成したい相手であれば、企画の良い部分を褒め、良くない部分をダメ出しして、再度、企画を練り直させるのがよいでしょう。一方で、取引先など育成する立場にない場合は、ハッキリとダメだと伝えましょう。これは、相手の時間を無駄にしないためです。良いところをほめると「まだ可能性があるのでは?」と勘違いさせてしまいます。

 ただし、「面白い」「面白くない」という言葉は、企画者とコミュニケーションを取るうえで適切な表現とはいえません。面白いかどうかを感じるのはあくまで消費者やユーザーだからです。

「面白いから当たる」というのは違います。「面白いか面白くないか」で評価する人は、自分の「好き嫌い」の言い換えで表現している場合が多いはずです。

「面白い」「面白くない」は便利な言葉ですから安易に使ってしまいます。便利な理由は、とても「曖昧な表現」だからです。あえて「面白い」という言葉を封印して企画の判断をしてみてください。自分の判断がロジックなのか好き嫌いなのかハッキリしますし、企画の解像度が上がります。

 また、断る理由として、「昔やったから」「今まであったから」と伝えることはよくあると思います。しかし、これは最もしてはいけないリアクションです。その比較には意味がありません。

 同じ企画内容だとしても、企画者が異なれば企画は別物になります。むしろ似た企画があったということはポジティブなことです。一度も存在したことのない企画よりも、実現したことがある分「人々に受け入れられる可能性が高い」ということになりますし、そもそも企画は「世に出るタイミング」だけでも結果が大きく変わるものだからです。

企画者のパフォーマンスを最大限に引き出すカギは「大義」と「共感」

 企画者に「やりたいと思わせる」ことは、発注する側にとって「コスパが格段によくなる」ということです。

 企画者が心からやりたいと思っていれば、たとえ休日返上になっても成功させよう」などと奮闘するでしょう。しかし、いわゆる「やらされ仕事の企画」であれば「必要最低限を超えた工数をかけようとは思わない」のが一般的な感覚です。

 どんな企画者に対しても「やりたい」と思わせる最も有効な手段は「大義を説く」ということです。どんな仕事にも現実的な目標が設定されていると思いますが、「大義」はそれよりも高い視座で考えられたものだと捉えてください。

 大義には社会的なものから、「あなたの人生の役に立つ」という個人的なものもあります。相手がどんな大義であれば「共感」してくれるのかを考えながら共有するのがよいでしょう。

 受託における企画業は、クライアントのオーダーを安全に完了することが仕事ですし、その完了とアウトプットに喜びを感じる仕事です。しかし大義があり、それに共感した時の企画者は、発注側と同じく「完全な当事者」となります。

 発注者は、「実行部隊である企画者に当事者意識をいかに持たせるか」が腕の見せ所です。優秀な人やチームを動かすには、「大義と共感」が必要なのです。

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「受け取る側の意識」でも企画の成否が決まる

 企画が成功するかどうかは、企画者の能力だけで決まるものではありません。企画を受け取る側の意識次第で、バズる企画が生まれたり、反対に企画の魅力を殺してしまったり、結果は180度異なるものとなります。

 まずは、自分も企画の実現プロセスに関わる共犯者の一部なのだという意識で臨んでみることをおすすめします。

 

■ 高瀬敦也(たかせ・あつや)
 コンテンツプロデューサー。原作企画者。株式会社ジェネレートワン代表取締役CEO。
 フジテレビ在職中「逃走中」「ヌメロン」「有吉の夏休み」などを企画。ゲーム化もプロデュースした「逃走中」は累計100万本を達成。独立後は多分野でヒットコンテンツを企画。YouTubeチャンネル「お金のまなびば!」の動画プロデュース・ Twitterでの「伯方の塩二代目声優オーディション」・日本酒「騨飛龍」のプロデュースなど、現在15社以上で顧問・アドバイザーを務める。「メンバー全員がコンテンツを創って世に出しまくる」ことを応援するオンラインサロン「コンテンツファクトリー2030」主宰。著書『人がうごく コンテンツのつくり方』(クロスメディア・パブリッシング)はベストセラー。

 

高瀬氏の著書:
企画――「いい企画」なんて存在しない

高瀬 敦也