「投資は自己責任」という言葉の先にある現実

「投資は自己責任」という言葉がよく聞かれるようになりました。

「投資行動は最終的には自分自身で判断するものなので、その結果責任も、判断した本人が負わなくてはならない」という内容です。このこと自体に異論はないと思います。しかし、その先にある「人生(の特に後半の時間)が豊かに過ごせるかどうかも自己責任」という現実が突きつけられていることに、どれだけリアリティを持てるでしょうか。

最近、メディアでは、「老後破産」をはじめとして、「貧困」とか「下流」という表現を耳にする機会が増えたように思います。煽り過ぎではないか、という印象も残るのですが、少子高齢化が進むのは確かで、政府の財政が厳しくなっていく一方で、社会保障負担がじわりと増え続けて軽くなる兆しもないという話を聞くにつけ、将来に不安を感じるのはもっともなことです。

合わせてよく聞かれるようになった「格差」という言葉があります。この言葉は、場合によっては、自分がひどい目にあうのではないかという漠然とした不安を与えます。同時に、一部ではうまくいっている人がいることを暗に示す言葉でもあります。

「貯蓄から投資へ」を促す国公認の「武器」がそろってきた

個人の金融資産は1,700兆円ほどあり、その半分以上が現預金と言われています。あまりに現預金の占める割合が高いということで、政府は「貯蓄から投資へ」の動きを促そうとしています。しかし、その意味するところは、金融資産の中身のバランスを直そうということだけではないようです。

「単に貯蓄の形で置いていても資産の有効活用と言えないし、今後は国も手厚く面倒を見る余裕がありません。制度だけは整備しておきますので、あとは自力でお願いします」という姿勢が読み取れます。

実際、2014年にはNISA(少額投資非課税制度)が始まりました。2016年には、その子ども版とも言えるジュニアNISAの制度が加わりました。年明けの2017年1月からは個人型確定拠出年金(iDeCo)の利用対象が拡大となり、事実上、国民の大半が利用できるものになります。さらに、今から1年後の2018年からは、積立NISAの制度も始まる予定です。

個別の制度の説明はここではしませんが、どれも、一定の条件の範囲内で、投資リターンを大きく押し下げる要因である税金が免除される仕組みとなっています。資産運用のための「武器」がそろってきたといったところでしょうか。

投資のリターンを上げるために「武器」のフォーメーションを考える

このように投資にまつわる税金を抑制する「武器」が出そろってくると、次は、どの「武器」を使ったら効果を上げられるのか、という視点が重要になってきます。

ここで、資産運用の目的が「老後を豊かに過ごす」ことだとしましょう。30歳の人であれば、60歳になるまでの30年間、iDeCoを使って資金を積み立てながら運用していくのは、有力な選択肢となります。しかし、55歳の人にとっては、60歳まで5年しかないため、iDeCoを使うよりも、いつでも引き下ろせて手数料がかからないNISAを使った方が良いという考え方も浮上してきます。

このように、仮に資産運用の目的が同じでも、年齢が異なるだけで、使う「武器」が違ってくるのは十分考えられることです。ということは、最適な「武器」を決めるには、資産運用の目的、家族構成や職業、現在の保有資産や家計状況などのライフスタイルにまつわる要素を加味していかないといけないということになります。

さらに言うと、使える「武器」は1つとは限りません。複数の「武器」をどう組み合わせるか、つまりフォーメーションの組み方が大切になってきます。長期間にわたって積み立てる積立型の商品への投資を考えているのであれば、積立NISAかiDeCoを使うのが良いでしょう。

一方、積極的に値上がり益を狙うものの、値上がりのタイミングが読めないのであれば、NISAを使った方が良いという考え方が成り立ちます。上では触れてはいませんが、生命保険との兼ね合いも重要な要素となりえます。

ライフプランに基づく資産運用プラン作成が将来の差につながる?

ライフスタイルと、それに基づく将来のライフプランは、人によって様々です。考えなくてはならないことは多岐にわたるため、ライフプランをつくり、それをベースに資産運用のプランをつくるのは大変なことです。

しかし、この作業をやっておくことで、将来「豊かな人生後半」を過ごせる可能性が高まるとしたら、ある程度時間をかけてでもしっかりと取り組む価値があるはずです。「武器」が出そろってきた2017年こそ、ライフプランに基づく自分自身の資産運用のプランをつくってみることをお勧めします。

 

藤野 敬太