いまさら聞けない「老後2000万円問題」をおさらい

ここからは、冒頭に掲げました「老後2000万円問題」について、金融審議会「市場ワーキング・グループ」(第21回厚生労働省提出資料)をもとに確認していきます。

同資料内では、モデルケースとなるシニア夫婦世帯のひと月の収支について、以下のような試算がなされています。

  • 収入:約20万9198円
  • 支出:約26万3718円

このモデルケースの収入から支出を差し引くと、赤字分は月約5.5万円です。
つまり、老後が約30年間続いたと仮定した計算式が以下になります。

5.5万円×12か月×30年=1980万円 

こうして2000万円という金額が算出されていますが、老後2000万円問題の計算には3つの落とし穴があるのはご存じでしたでしょうか。

まず1つ目の落とし穴は、住居費用です。

老後2000万円問題のモデルケースの支出の内訳を確認していくと、住居費用が1万3656円という設定になっています。

現在賃貸に住んでいる方は、「この費用では家賃を払えない」と感じた人も多いでしょう。

老後も賃貸住まいの計画の方は、老後2000万円のご準備に上乗せして考えなくてはいけません。

2つ目の落とし穴は、ライフスタイルが考慮されていないことです。

生命保険文化センターの「生活保障に関する調査」(令和元年度)では、ゆとりある老後生活費は平均36.1万円という結果になっています。

これをもとに計算した場合は、月々の赤字は約15万円、同じく老後30年計算だと約5400万円と跳ね上がります。

そして3つ目の落とし穴は、介護費用が含まれていないという点です。例えば、LIFULL介護のデータを用いて平均の入居期間である5年間で計算すると、サービス付高齢者向け住宅で約1000万円、有料老人ホームで約1900万円かかります。

以上のことから、安心した老後生活を送るためには、個人差はあるものの2000万円では足りない可能性があります。