新型コロナウイルスの感染が再び拡大し、とうとう東京五輪は無観客での開催となった。同時に、緊急事態宣言下での五輪開催という前代未聞の事態となってしまった。
一方、世界でも今年は新型コロナをはじめ、イスラエルとパレスチナの軍事衝突、ミャンマーのクーデター、そして欧米と中国との対立激化など多くの問題が生じている。
そして、それらは海外にビジネス展開する日本企業にとっても決して他人事ではない状況だ。
駐在員を緊急帰国させる事態が増えている
筆者は安全保障分野の研究者・大学教員である一方、実務家としてテロや経済摩擦などの地政学リスクについて企業にアドバイスをしている。
今年に入り、たとえば、ミャンマークーデターが2月以降長期化するなか、いつまで駐在員を現地に留まらせるか、どういった場合に緊急帰国させるべきかを検討する日本企業が大幅に増えた。
また、昨今、新型コロナ・デルタ株が猛威を振るう東南アジアでは感染拡大が止まらず、日本政府もインドネシアからの邦人帰国作業を本格化させている。
各企業にとって、駐在員の緊急帰国とは基本的には最後の決断であろうが、今年は既にそういった事態が複数生じている。
しかし、実際、各企業にとって帰国という決断は決して簡単ではなく(早い時期の決断になることはなく)、ある程度現地の情勢が暴動や軍事衝突によって激化し、また、新型コロナであれば感染がある程度拡大した後になる場合が多い。