台湾FPD(Flat Panel Display)メーカー大手4社(AU Optronics=AUO、イノラックス、ハンスター、ジャイアントプラス)の2021年6月業績が出揃い、21年4~6月期の暫定値が明らかになった。売上高は4社合計で前年同期比47%増の1996億台湾ドルと、21年1~3月期に続いて大きく伸びた。液晶パネルの価格上昇が継続した恩恵を受け、21年1~3月期比でも13%増と2桁成長を記録した。
AUOは18四半期ぶりの売上高
AUO(友達光電)の21年4~6月期売上高は前年同期比51%増/前四半期比15%増の957億台湾ドルだった。売上高が900億台湾ドルを超えたのは、16年10~12月期以来18四半期ぶり。6月の単月売上高は21年に入って最大の340億台湾ドルを記録した。
21年4~6月期の出荷面積は同0.2%増/同0.8%増の640万㎡であり、液晶パネル価格の上昇の恩恵がどれだけ大きいかを如実に示した。
5月に開催されたFPDの国際会議「SID(the Society for Information Display)」では、ポストコロナ時代に対応したディスプレー技術を提案した。9.4インチのフレキシブルマイクロLEDディスプレーを組み込んだ次世代車載コクピットや、両面表示が可能な5.6インチのローラブル有機EL、インクジェット成膜と酸化物TFTバックプレーンを組み合わせた32インチ4K有機ELなどを展示し、革新を加速していくため、国立台湾大学と共同研究センターを設立したことも明らかにした。
イノラックスは6年ぶりの大台に
イノラックス(群創光電)の21年4~6月期売上高は同39%増/同11%増の932億台湾ドルだった。再びAUOに抜かれたが、15年4~6月期以来6年ぶりに900億台湾ドルを超えた。出荷台数は、大型パネルが同10%増/同1%減の3693万台、中小型パネルが同8%増/同2%増の8275万台となり、旺盛な需要が継続した。
イノラックスは「非液晶事業」の強化・拡大に向けて、3.5世代ガラス基板を用いた半導体のパネルレベルパッケージ(PLP)技術を開発している。台湾経済部技術部門の支援を受けて、300mmウエハーの約6倍の面積がある3.5世代ガラスを用い、ファンアウトウエハーレベルパッケージの大量生産と低コスト化を実現する考え。パートナーと協力して電気めっき装置やプロセス技術を開発中で、今後は半導体を一貫生産するIDM(Integrated Device Manufacturer)、半導体の組立やテストなどの後工程を担うOSAT(Outsourced Semiconductor Assembly and Test)、ファンドリーなどとも協力する考え。
ハンスターは増強投資を決定
ハンスターディスプレー(瀚宇彩昌)の21年4~6月期売上高は同2.2倍増/同2%増の80.7億台湾ドルと、21年1~3月期に続き4社で最大の伸びを記録した。出荷台数は、大型パネルが同27%増/同25%減の72万台、中小型パネルが同14%減/同25%増の1億783万台となり、21年1~3月期に比べて中小型パネルの出荷を大きく増やした。
先ごろ、TFT液晶の月産能力を3万枚追加する170億台湾ドルの投資計画を決めた。稼働時期は公表していないが、22年末~23年初頭とみられる。同社は台南に5.3世代(1200×1300mm)ガラスの工場「ファブ3」を運営しており、月産14万枚の能力を持つ。今回の増強で月産能力は17万枚に増加し、ミニLEDバックライトを搭載するモデルや、マイクロLEDディスプレーの製品化にも寄与する見込みだ。
価格反転でピークアウトの可能性も
凸版印刷グループ傘下のジャイアントプラス(凌巨科技)の21年4~6月期売上高は同51%増/同22%増の26.9億台湾ドルだった。自動車市場の復調で、主力の車載用液晶パネルの需要が回復していることなどが寄与したとみられる。
こうした状況から、21年4~6月期は営業利益率が20%に達するメーカーが出てくる可能性がある(21年1~3月期は、AUOが14.5%、イノラックスが17.7%。ハンスターは21年1~3月期段階で40%超)。一方で、液晶の価格は21年7~9月期から値下がりに転ずるのではとの観測も強まっており、そうなれば21年4~6月期が業績のピークになる可能性もある。
電子デバイス産業新聞 編集長 津村 明宏