米国の利上げ決定で今年の注目イベントはほぼ出尽くした感がありますが、長期的な資産形成のための株式投資の勉強に終わりはありません。今回は、以下の3つの記事から今年を振り返り、2017年の投資戦略を考えたいと思います。
サプライズイベントが多かった2016年の為替市場
今年の世相を表す漢字は「金」となりました。これは、毎年一般募集により選ばれ、日本漢字検定協会が発表するものです。
同協会によると、リオデジャネイロオリンピックでの日本選手の「金」メダル獲得や政治と「金」の問題が話題になったこと、トランプ次期大統領の「金」髪、マイナス「金」利が注目されたことなどが選ばれた理由であるとのことです。
一方、以下の記事によると為替市場における今年の漢字は「驚」だそうです。BREXIT(英国のEU離脱決定)、トランプ氏の大統領選での勝利、OEPCおよび非OPECの減産合意、米国の利上げが今回12月の1回だけに留まったことなど、政治や経済政策に関する想定外の出来事が数多くあったことがその理由とされています。
興味深いのは、これらのサプライズイベントの多くが今年中に決着せず、来年に持ち越されて相場に影響を与える可能性が高いことです。したがって、今年起きた「サプライズ」を改めて振り返りながら、来年のシナリオを考えることをお勧めいたします。
国内の景況感は改善傾向に
このように、2016年は海外要因に振り回された1年でした。では、足元の国内景気はどのようになっているのでしょうか。
そのことを確認するために、2016年12月14日に発表された日銀短観を見てみたいと思います。これによると、大企業・製造業の「最近」の景況感を示す業況判断指数(DI)はプラス10となり、6四半期ぶりに改善が見られました。
背景には、トランプ相場による円安、株高があるようです。大企業・製造業以外では、大企業・非製造業は前期比横ばいに留まっていますが、中堅企業、中小企業は、いずれも製造業、非製造業ともにDIは前期比で改善傾向が見られました。
一方、今回の短観で話題になったのは、「先行き」(3か月後の見通し)に関しては、大企業から中小企業まで全てが悪化を見込んでいたことです。
前提となる為替レートが足元の水準よりもかなり円高であったことが大きな要因であると考えられますが、これが「単に計画のベースとなる為替前提レートを変更していないこと」によるものか、あるいは、それ以外の理由があるのかが気になるところです。
仮に、前者が慎重な見通しの理由であったとすると、次回の短観ではDIの大幅な改善が見込まれ、また、今後の決算では業績予想の上方修正が相次ぐことも予想されます。
ちなみに、以下の記事によると、景気ウォッチャー調査(11月25日~月末調査)では景気判断の改善が示されていることなどから、今後の国内景気の持ち直しが期待されるとのことです。
出所:日銀短観は足元の企業景況感の改善を示す(アセットマネジメントOne)
ロシア関連にも要注目
金融政策や為替動向ばかりに注目が集まった1年でしたが、外交関係の変化にも注目したいと思います。その1つがロシア関連です。プーチン大統領の来日や、トランプ次期大統領の誕生による米国とロシアの関係改善などの思惑から、これまであまり注目されてこなかったロシア関連も株式市場で動意づく可能性があるからです。
もちろん、潜在的なリスクも大きい地域であるため、国内株や米国株と同じような感覚で投資することは避けるべきですが、どのような投資機会があるかは知っておいてもよいかと思います。
この記事によると、投資コストを抑制しつつ手軽に分散投資したいなら、ロシア株式連動型ETF(ドル建てと円建ての上場投信)に注目することが一案とのことです。また、日本の総合商社、インフラ関連、食品メーカーの中にはロシアへの投資を行っている会社も多いので、そうした会社に投資するのも一考に値するかもしれません。
LIMO編集部