さらに、だれもが「老後に2000万円不足する」といった一律化された議論になった点も、違和感が募りました。

退職後の生活はひとそれぞれ違っていて、一律ではありません。筆者は、退職後の生活は、現役時代の延長線上にあるものとして、現役世代の生活費水準が大きく影響すると考えています。

現役時代の生活水準が高い人は、資産収入から賄う分は「2000万円では足りない」でしょうし、現役時代の生活水準を抑制してきた人にとっては、「2000万円も必要ない」という可能性も十分にあります。

若年層「資産形成の必要性に気づく」という効用も

一方で、この問題が多くの若い人たちに「資産形成を真剣に考える必要がある」と思わせた点は、評価できるでしょう。

この報告書は金融庁のホームページで最も検索されたレポートだったようで、マスコミでの騒動が若年層の資産形成にプラスの効果をもたらしたのかもしれません。

ところで、図ったわけではありませんが、その前年2018年1月から金融庁は若年層の活用を想定した資産形成のための非課税制度「つみたてNISA(少額投資非課税制度)」をスタートさせています。

制度があって、危機感が醸成されるという、いいタイミングが重なったことで、急速に資産形成の機運が盛り上がっているように感じます。