中高年は荒野をめざせるか

さて、最後は働き方における“越境"への雑感です。まず、ごく最近までの日本企業、日本人の働き方において越境は“禁じ手"でした。法律にこそ書いていませんでしたが。

他企業のカルチャーなどは全く関心ナシ。大企業では社内他部署も同様。そもそも仕事の仕方が“自分の関係のない業務には口出ししない"が美徳でしたから。

自分は零細規模の企業(広告プロダクション)で長年働いていましたが、楽しみのひとつが中途で入ってくる人間、つまり“越境者"でした。「どんなヤツなのか、なにができるのか」とワクワクしたものですが、これは零細企業の特異例でしょう。

得意先の大企業を見れば、職位が上がれば上がるほど内向きになります。つまり分かりやすく言えば、“越境者"なんて邪魔者だったわけです。経産省の提言は、本来、天地逆転ほどのインパクトがあることだと思います。

実は、若い層は“予測不可能な時代"も“越境"の意味も、ハダ感覚で判っている気がします。自分の働く会社が未来永劫あるなんて思っていませんから。

要は、問題は自分を含めた中高年ということになります。この層は頭ではわかっていても「オレが働くのは、あとxx年だから逃げ切れるな」と思いがち。

数十年前に「青年は荒野をめざす(五木寛之)」というベストセラー小説がありました。当時、この本を読んでいた少年・青年、つまり現・中高年が、そういった熱い気持ちを再び取り戻せるかが、実は日本の未来を握っているのかもしれませんね。

参考資料

榎本 洋