2016年9月18日は吉野家の牛丼販売再開から10周年だった

少し前の話になりますが、今年2016年9月は記念すべき10周年に当たりました。今から10年前の2006年7月(注)、それまで約2年半にわたって輸入禁止だった米国産牛肉の輸入が解禁となり、吉野家の牛丼も復活したのです。

当時、筆者を始めとする牛丼ファン、いや、もっと正確に言うと、吉野家ファンは心から喜んだものでした。

(注)輸入解禁は2006年7月下旬でしたが、販売再開は9月になりました。

米国産牛肉の輸入禁止が牛丼チェーン店を直撃

2003年12月26日、米国でBSE(牛海綿状脳症)感染の疑いがある牛が発見されたことを受け、日本政府は米国産牛肉の全面的な輸入禁止を決定します。当時、吉野家を始めとする牛丼チェーン店の多くは、米国産牛肉を使用していたため、大きな打撃を受けることになりました。

輸入禁止が実施された当初、一部に早期の解禁期待もありました。しかし、輸入禁止措置が長期化するに伴い、牛丼チェーン店を展開する各社は、対応策に追われることになります。

頑なに米国産牛肉にこだわった吉野家のぶれない方針

その時、吉野家を除く他社が取った対応策の柱は、豪州を始めとする他国からの輸入に切り替えることでした。

しかし、吉野家は米国産牛肉にこだわり、他の対応策を講じました。主なものでは、特盛丼の提供中止や深夜営業の大幅縮小による在庫減少の遅延、豚丼など新規メニューによる顧客離れの食い止めなどです。

それでも、2004年2月には販売中止に追い込まれ、ある種の経営危機を迎えてしまったのです。ただ、豪州産牛肉を用いた牛焼肉丼は始めたものの、従来の牛丼は頑なに米国産牛肉にこだわりました。この吉野家のぶれない方針には、今思い返しても頭が下がります。

2年半ぶりの販売再開には涙を流して食べるファンも

結果的に、吉野家は深刻な業績悪化を強いられますが、全国の吉野家ファンの力強いサポートなどもあり、何とかやり繰りしました。そして、日本政府の米国産牛肉輸入再開を受け、2006年9月18日に約2年半ぶりの販売再開となったのです。

あの販売再開の日、心の底から喜んで涙した人も少なくなかったはずです。

あれから10年、吉野家は苦戦中

早いもので、あれから10年が経ちましたが、結論から言うと吉野家は苦戦しています。

店舗数では、すき家に抜かれて首位から転落し、第3位の松屋との差も縮小しています。もちろん、店舗数が多ければよいという問題ではありませんが、ジリ貧のイメージがやや強まっていることは否めません。

業績と株価も競合2社に大きく後れを取る

また、業績も低迷しています。

先日発表された2017年3月上期(4-9月期)決算実績を見ると、すき家を展開するゼンショーホールディングス(7550)の経常利益が対前年同期比+71%増(利益率3.7%)、松屋を展開する松屋フーズ(9887)が同+113%増(同4.9%)の大幅増益だったのに対し、吉野家ホールディングス(9861)は同▲21%減(同1.0%)と苦しんでいます(注:吉野家ホールディングスは2月決算のため3-8月期)。

これらの業績は牛丼以外の事業も含んだ結果ですので、必ずしも“吉野家の牛丼が一人負け”とは限りませんが、非常に厳しい状況であることは確かです。

また、それを反映して株価も低調が続いています。

足元の株価を見ると、ゼンショーホールディングスと松屋フーズは両社とも10年来高値を更新する上昇が続いています。しかし、吉野家ホールディングスの株価は、年初来高値圏にはあるものの、10年前の株価の約65%水準でしかありません。

株価を見る限り、吉野家ホールディングスに対する成長期待は低いと言わざるを得ません。

牛丼チェーン各社の過去10年間の株価推移(青:吉野家ホールディングス、赤:松屋フーズ、緑:ゼンショーホールディングス)

吉野家の巻き返しに期待

しかし、ネットで見られる各種アンケートでは、吉野家の人気は依然として高いことが判明しています。皆さんの周りにも、“牛丼は吉野家だ”という人は多いのではないでしょうか。

今後の吉野家の巻き返しを願って、今日も吉野家の牛丼を食べました。並盛で380円。こんなに安くて美味しい牛丼を提供してくれる吉野家、改めて10年前の感涙にむせんだ時を思い出しました。

 

LIMO編集部