2019年、金融庁のレポートに端を発した「老後2000万円問題」がまだ記憶に新しい方もいらっしゃるかと思います。

ざっくりいうと、「夫65歳、妻60歳の時点で夫婦ともに無職の世帯が30年生きた場合、標準的な生活を送るために、公的年金以外に2000万円が必要となる」という内容です。

これはあくまでもモデルケースに基づく試算の結果です。もちろん、すべての人に当てはまるとはいえません。とはいえ、ここでにわかにクローズアップされた「2000万円」を、リタイヤまでの目標貯蓄額としてこの金額を掲げられたご家庭も少なくないでしょう。

「2000万円」という金額は、ほとんどの世帯にとって一朝一夕で準備できるものではないはずです。

いわゆるバブル期に現役時代を過ごされた方が多い日本のシニア世代は、しばしば「お金持ちが多い」というイメージを持たれることがありますね。さらに、定年退職金の受取りや遺産相続を経験した方も多いでしょう。

そんなシニア世代にとって、この「2000万円」という金額はどの程度の位置づけと考えられそうでしょうか。

今回は、2021年5月18日に公表された総務省「家計調査」の最新版を参考に、65歳以上世帯の貯蓄事情と「2000万円」の関係にフォーカスしていきます。

いまどきの高齢者世帯って、どのくらい貯蓄があるの?

ここからは、総務省統計局の「家計調査報告(貯蓄・負債編)-2020年(令和2年)平均結果-(二人以上の世帯)」から、シニア世帯の貯蓄事情に関する最新データをご紹介していきます。

まず、二人以上の世帯のうち、世帯主が65歳以上の世帯について、貯蓄額の分布を見ていきます。

なお、貯蓄保有世帯の中央値は1555万円、平均値は2324万円です。

世帯主が65歳以上の世帯の貯蓄現在高階級別世帯分布
(二人以上の世帯)-2020年-

100万円未満・・・7.9%
100万~200万円・・・4.0%
200万~300万円・・・3.5%
300万~400万円・・・3.7%
400万~500万円・・・3.3%
500万~600万円・・・3.8%
600万~700万円・・・3.4%
700万~800万円・・・3.2%
800万~900万円・・・2.9%
900万~1000万円・・・2.5%
1000万~1200万円・・・5.7%
1200万~1400万円・・・4.5%
1400万~1600万円・・・4.5%⇐貯蓄保有世帯の「中央値」(1555万円)
1600万~1800万円・・・3.1%
1800万~2000万円・・・3.3%
2000万~2500万円・・・8.3%⇐貯蓄保有世帯の「平均値」(2324万円)
2500万~3000万円・・・6.4%
3000万~4000万円・・・8.7%
4000万円以上・・・17.3%

この分布からは、65歳以上世帯の40.7%が、2000万円以上の貯蓄を保有していることが分かります。

その一方で300万円未満の世帯が15.4%存在する「老老格差」の一面も看過できないといえますが、その話はまた別の機会で扱うことにしましょう。

「平均値と中央値」のお話

「平均値」は、一部の極端な数値の影響を受けて、動きやすいという特徴があります。ここでいうと「一部のお金持ち層に引っ張られて、平均額が上がる」というイメージですね。

一方で、「中央値」はデータを順番に並べた時に全体の真ん中にくる値を指します。よって、平均値より中央値の方が、「実感により近い」金額ですので、参考にしやすいといえるでしょう。