各社首脳の困った顔に惑わされない
各社首脳が記者会見で困った顔をしているとしても、本当は困っていないのかもしれない、ということには留意が必要です。各社首脳がカルテル効果に気づいていないのかもしれないですが、気づいていてもマスコミと消費者の同情を買うために困った顔をしているのかもしれません。
もちろん、メーカーによって大幅減産を強いられるところと小幅減産で済むところがあるでしょうし、それによって減益となる企業と大幅増益となる企業があるでしょうが、業界全体としての利益は増加する可能性が高いのかもしれません。
あとは、「1割減産なら価格が1割上昇」といった減産幅と値上がり幅の関係には要注目ですね。1割減産しても価格が1%しか値上がりしなかった、ということならば業界全体として減益でしょうが、1割減産で1割値上がりなら増益になるはずです。売上金額はほとんど変わらないのに、材料費が1割減るからです。
もうひとつ、実は半導体不足がそれほど深刻ではなく、各社の減産がわずかであって値段も変わらなかった、という可能性もありそうです。筆者が大騒ぎしすぎた、というケースですね(笑)。もっとも、その場合でも自動車業界は困っていないはずです。
値上がりしなかったということは需要に見合った生産が行われたということなので、何も困らないからです。むしろ減産しなかったら供給過剰で値崩れしていたかもしれませんから。
ちなみに、完成車メーカーのみならず、中古車ディーラーにも恩恵が行くかもしれません。新車が不足したり値上がりしたりしたら、中古車の需要が増えるでしょうから。
とはいえ、自動車メーカーや中古車ディーラーの株価が上がるとは限りません。株価は色々な要因で変動しますから。投資はくれぐれも自己責任でお願いしますね。
本稿は、以上です。なお、本稿は筆者の個人的な見解であり、筆者の属する組織その他の見解ではありません。また、厳密さより理解の容易さを優先しているため、細部が事実と異なる場合があります。ご了承ください。
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塚崎 公義