半導体分野における台湾の存在が、バイデン大統領にとっても魅力的に映ることは間違いないだろう。しかし、脱台湾に打って出ることはないにしても、半導体の国産化の動きを見せる背景には安全保障の懸念がある。

中国が台湾に侵攻する恐れ

最近、安全保障の世界では台湾有事を巡る動きで緊張が高まっている。

米インド太平洋軍の司令官は3月9日、上院軍事委員会の公聴会の席で、6年以内に中国が台湾に侵攻する恐れがあると述べ、周辺海域における軍事バランスが中国優位に傾いていると強い懸念を示した。実際、6年以内にそれが現実となる可能性は高くないが、偶発的な衝突によって一気に緊張が高まる恐れがある。

仮に、台湾有事となれば半導体を巡る経済への影響は大きく、しかも台湾へ一極依存していればなおさらだろう。米国にはそういった危機意識があり、バイデン大統領がやろうとしていることは正にリスクヘッジだ。

また、台湾有事が発生すれば日本経済への打撃は計り知れない。半導体問題だけでなく、南シナ海や東シナ海など日本のシーレーンが大きな影響を受け、日本に到着予定の石油タンカーや民間商船の安全な航行が阻害される可能性がある。

日本企業は経済安全保障への備えを

有事や安全保障の分野を経済と切り離して考える経営者は依然として多い。

しかし、世界情勢を見れば分かるように、政治と経済は表裏一帯の関係にあり、今後さらに経済安全保障という分野が企業にとっても重要になっていく。台湾を巡る半導体事情もその1つであることは間違いない。

和田 大樹