新型コロナの影響で深刻な業績悪化に陥る業種・企業がある一方、IT・ゲーム関連は好調な企業が目立ちます。中でも任天堂(7974)は、2021年3月期の売上高が対前年比で34.4%増。最終利益はなんと同85.7%増で、12年ぶりに過去最高益を更新しました。
追い風になったのは巣ごもり需要ですが、Nintendo Switch向けソフトの好調も目ざましいものがあります。以下、絶好調の業績について詳しく見ていきましょう。
現預金が1兆円を突破、金持ち企業ランキングでも1位
コロナ禍では巣ごもり需要でゲーム業界も特需の恩恵を受けました。カプコンやスクウェア・エニックス・ホールディングス、ソニー(ゲーム関連事業)はいずれも2021年3月期に売上高2ケタ増を記録しています。
日本を代表するゲーム企業である任天堂も例外ではありません。Nintendo Switch向けソフトの売上が伸びたほか、アプリ関連収入も好調となりました。
何より現預金が前期より3000億円近くも増え、1兆円を突破したことは驚きです。
ちなみに、今年2月に与信管理サービスを行うリスクモンスター株式会社が発表した「第9回 金持ち企業ランキング【特別版(中間決算)】」でも、決算書に基づくNetCashのランキングで1位となっています。
※NetCash:現預金から短期・長期の借入金、社債、1年以内返済の長期借入金1年以内償還の社債、割引手形を控除した値
Nintendo Switchの大成功
NINTENDO64、ゲームボーイ、3DS…マリオ、ポケモン、どうぶつの森…とハード・ソフトの両方で名作を生み続けた任天堂。2017年3月に発売され、据置きでも携帯でも楽しめる「Nintendo Switch(以下Switch)」は、2021年3月末時点での累積販売がハード8459万台、ソフト5億8712万本に上ります。
その好調さはコロナ禍以前から続いており、2018年3月期から2021年3月期の業績は以下のように増収増益で推移していますが、やはりコロナ特需の2021年3月期には前期比の増加率が跳ね上がっています。
- 売上高:1兆557億円⇒1兆2006億円(13.7%増)⇒1兆3085億円(9.0%増)⇒1兆7589億円(34.4%増)
- 営業利益:1776億円⇒2497億円(40.6%増)⇒3524億円(41.1%増)⇒6406億円(81.8%増)
- 最終利益:1396億円⇒1940億円(39.0%増)⇒2586億円(33.3%増)⇒4804億円(85.7%増)
2019年3月期は、Switch向けソフト「大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL」などが1000万本以上のヒット作となるなど、前期比87%増(1億1885万本)というソフトの好調が増収増益に寄与しました。
翌2020年3月期は携帯専用の「Nintendo Switch Lite」を発売したほか、売上本数1177万本を記録した『あつまれ どうぶつの森』を筆頭に、他メーカー合わせ27タイトルのミリオンセラーが好調要因となったようです。
そして、今月6日に発表された2021年3月期決算も、上記のような大幅増収増益。『あつまれ どうぶつの森』が2085万本と前期比75%以上の実績をあげたほか『マリオカート8 デラックス』も1000万本以上を記録しています。
Switch本体の販売台数が37.1%増(2883万台)と、24.0%増の前期より大きく伸びたことから巣ごもりを機にSwitchを購入する消費者が増えたと見られるほか、アプリなどモバイル関連の売上高も570億円と11.3%伸びました。また、利益面では売上高34.4%増に対し、販管費が14.0%程度であることも大幅増益につながったようです。
ちなみに任天堂は財務健全性の高い企業として知られ、2018年3月期から2021年3月期まで、自己資本比率は81%⇒83%⇒80%⇒77%と8割近い水準を維持しています。
株価はどう動いたか
任天堂の株価はSwitchを発売した2018年3月期末に4万6000円台を推移していましたが、2019年3月期末時点では新しい材料もなく3万1000円台まで下落しました。しかし2020年3月期は多数のミリオンセラーが株価の追い風になり、2019年12月時点で4万3000円台まで回復しています。
2020年3月中旬にはコロナショックによって33,000台まで急落しますが、その後はコロナ特需により株価は上昇。2021年に入って2月17日には6万9830円の年初来高値をつけ、直近は62,000万円台から64,000円台へと上昇しています。
任天堂の過去10年の株価推移1/1
コロナ特需一服で減収減益予想
今後の見通しとして、任天堂は2022年3月期に売上高1兆6000億円(▲9.0%)、営業利益5000億円(▲22.0%)、最終利益3400億円(▲29.2%)と減収減益を予想しています。
コロナ特需一服を見込んで、2021年3月期と比較してハードは2883万本⇒2550万本、ソフトは2億3088万本⇒1億9000万本となっており、特に材料も無いため株価は再び下落に転じるかもしれません。現状ではSwitch新モデルの発表予定はないと報じられていますので、ソフトウェアのヒットに期待したいところです。
まとめ
Swtichの成功によって成長を続けた任天堂は、巣ごもり特需によってさらに業績を伸ばしました。マリオ、ポケモン、どうぶつの森などSwitchより以前のハードでも展開されているタイトルは根強い人気を維持しています。2022年3月期は特需の一服で株価がどう動くのかにも注視したいと思います。
参考資料
以下、すべて任天堂株式会社の発表による。
- 平成30年3月期決算短信〔日本基準〕(連結)
- 2019年3月期決算短信〔日本基準〕(連結)
- 2020年3月期決算短信〔日本基準〕(連結)
- 2021年3月期決算短信〔日本基準〕(連結)
- 第79期(2019年3月期)決算説明会資料
- 2020年3月期決算説明資料
- 2021年3月期決算説明資料
- ゲーム専用機販売実績
山口 伸
