日系企業にとっても対岸の火事ではない

3月にジェトロ(日本貿易振興機構)が発表した分析レポートを見てみよう。

それによると、中国に展開する英国企業で構成される中国英国商会が昨年秋に実施したアンケートの結果(256社が回答)、「来年(2021年)中国での業務への投資を増加あるいは減少させるか」の問いに、44%が増加させる、37%が変わらない、7%が減少させると回答した。

アンケートが実施された時期は、正にコロナ禍で両国関係が冷え込む最中だったが、それでも多くの企業はそのリスクを深刻には捉えていなかったようだ。

しかし、前年と比べ、増加させると回答した企業は16%減少し(前年は6割を占めた)、変化なしと回答した企業は11%増加、減少させると答えた企業は3%増加している。

この統計結果からは、現在のところ大きな影響は出ていないが、今後の両国関係の先行きを懸念する企業が少なからず増えていることが想像できる。

また、最近の英中関係、そして英国のインド太平洋戦略やバイデン政権との協力などを総合的に勘案すると、中国に展開する英国企業の意欲が鈍ってくる可能性も十分に考えられる。

一方、これは日系企業にとっても対岸の火事ではない。

中国との関係は各国によって違うし、各企業によっても中国市場の重要性は異なる。しかし、米中対立によって日中経済関係にも不安の声が行き交うなか、中国に展開する外国企業の動向を追うことは客観的な意味でも重要であろう。

参考資料

和田 大樹