電子ペーパーディスプレー(Electric Paper Display=EPD)の最大手、イー・インクホールディングス(台湾新竹市)は、2023年までにFPL(Front Panel Laminate)の生産能力を現有の5倍近くに引き上げる。台湾で新たに4ラインを順次立ち上げる予定で、カラー電子書籍端末や電子棚札(Electronic Shelf Label=ESL)向けの旺盛な需要に対応していく。

新ライン4本を整備へ

 同社は現在、台湾の林口と米ボストンにFPLラインを有しているが、20年12月にH1とH2、21年3月にH3とH4という新ラインを新竹に建設することを取締役会で決議した。H1とH2は21年末、H3とH4は22年末からそれぞれ稼働させる予定だ。

 これに伴って設備投資も増額する。20年は前年比37%増の7.56億台湾ドルを投資したが、21年は14億~16億台湾ドルに増やす予定だ。「現有の生産ラインは稼働率がきわめてタイトなため増設を決めた。新設するラインではマイクロカップ、マイクロカプセルの両方式を需要に応じて切り替えて生産できるようにする」と説明した。

20年業績は過去7年で最高

 先ごろ発表した20年の通年業績は、売上高が前年比13%増の153.6億台湾ドル、営業利益は同3.3倍の18.5億台湾ドル、純利益は同16%増の36.7億台湾ドルと増収増益になり、いずれも過去7年で最高だった。電子書籍、電子ノート、サイネージ、ESLいずれの用途でも需要が高かった。

 21年の事業見通しについては「上期は需要拡大が継続するとみているが、ドライバーICなどの部材不足の影響を一定程度受ける。教育用途を拡大し、カラー化や大型化でアップグレート需要を開拓したい。ESLの採用比率は世界でまだ5%にとどまっており、今後もさらなる需要拡大が期待できる」と語った。

 教育用途に向けては、ペンタブレットメーカーの㈱ワコム、電子ノートを開発するLinfinyと共同で、次世代電子ノートソリューションを開発した。21年夏に商品化する予定。10.3インチと13.3インチのイー・インク製EPD「Carta 1250」を搭載し、素早いページめくりやペンの書き込み速度向上を実現。重量と厚さは、10.3インチが261gで5.85mm、13.3インチが368gで5.7mm。1回の充電で最大3週間使用できるバッテリー寿命を備える。ちなみに、Linfinyは17年10月にイー・インクとソニーセミコンダクタソリューションズが設立した合弁会社。

カラーEPDの新製品を拡充

 新製品として、16階調のグレースケールと4096色のカラー表示が可能な6~7.8インチ対応の「Kaleid Plus(カレイドプラス)」を発売し、すでにPocketBookが「InkPad Color」とONYX Internatinalの「BOOX Nova3 Color」に採用された。印刷で形成したカラーフィルターアレイとインク層を組み合わせたカレイドの次世代品で、アニメーションやビデオの表示速度を高めるなど高性能化した。

 また、ESLや小売り用サイネージ向けに4色のインクを用いたEPD「Spectra 3100」も開発した。同社は13年に白黒に赤色または黄色を加えた3色インクのパネルを発表し、現在多くのESLに使用されているが、新製品は白、黒、赤、黄の4色の電子インクを採用し、より色の豊富なコンテンツを表現・表示することができる。従来のパネルに比べて表示の更新速度を高め、赤と黄色の動作温度範囲を拡張した。

電子デバイス産業新聞 編集長 津村 明宏