トランプ効果で目覚めた銀行株
銀行株が上昇しています。
トランプ氏が次期米国大統領の座を射止めた2016年11月7日-11日の週には、金融株が急騰しています。中でも注目は銀行株です。日銀のマイナス金利導入後、収益力に疑問が呈され、銀行株は主要セクターで最も厳しいパフォーマンスになってきました。しかし、トランプ効果で銀行株は目覚めたようです。
そこで今回は、メガバンクの中でも自由闊達さを取り戻しつつあり、フィンテックにも力を入れるみずほフィナンシャルグループ(8411)[以下、みずほFG] の株価をテクニカル面から分析します。
株価はもみ合いを経て上昇の機会をうかがい始めた
まず、過去2年間の株価の推移を見てみましょう。
ご覧のように、日銀が2016年1月の政策決定会合でマイナス金利を導入し、その後短期金利ばかりでなく長期金利までマイナスになったことで株価が低迷したことがわかります。
急落後、2016年2月以降は150円から190円のレンジの間を行ったり来たりしてきました。直近3か月は、むしろじりじりと下値を切り上げてきています。特に、2016年10月の金融政策決定会合でマイナス金利の副作用が日銀の認識に強く現れるようになってから、徐々に買い安心感が広まってきたように思います。
トランプという名のサンタクロース
このように、銀行株に対する過度な悲観論が薄れ始めたところでトランプ氏が米国の次期大統領に決まったわけです。
銀行株に対するトランプ効果はいくつか考えられます。3つ挙げてみましょう。
まず、米国で銀行に対する規制強化を緩和しようという動きです。この規制は銀行に保守的な経営を求めるため、金融システムの安定化を求める向きや預金者・債権者には好評でしたが、利益を求める株主には不評でした。
今回これを緩和することで株主メリットが大きくなる、このような期待から世界的に銀行株が見直されて上昇しています。みずほFG株もこの恩恵に浴していると言えるでしょう。
次に、世界的な長期金利上昇効果です。新政権では通商や国境の壁を高くし、さらに国内投資を活性化させることで雇用の促進を目指すため、将来の物価上昇率が高まるという期待が生まれ、米国の長期金利が急騰しました。投資家はより高い利回りを求めたのです。
米国の金利が上がれば世界の金利に伝播します。欧州の長期金利も同程度に上昇し、日本もわずかではありますが長期金利が上昇しました。銀行の収益の最大のカギは、低い金利で預金を集め、少しでも高い利回りで運用(貸出も含む)することにあります。金利上昇は追い風です。
最後に、ドル高円安です。円安は物価上昇を通じて日本の長期金利の上昇圧力につながります。これも銀行の収益性の向上に貢献するはずです。
トランプ氏が新大統領に決まって銀行株が上昇したのは、このような背景からなのです。
みずほFG株に2つの関門
上昇をはじめたみずほFG株、今後の展開はどうなるでしょうか。
株価の関門は2つあります。
第1関門:190円を超えることができるか?
まず、2016年2月以来続く150円-190円のレンジを上抜けることができるかです。2016年11月14日の終値は184.9円で、まだこのレンジをしっかり抜け出したとは言えません。もうひとつきっかけが欲しいところです。
第2関門:2015年6月から始まる下降トレンドを上抜けるか?
仮に190円を上抜けたとすると、次の関門は、2015年6月から始まる下降トレンドを抜け出せるかです。おおまかに言うと、220円を超えることができるかです。この中期下降トレンドを上抜けできると、チャート上は株価の大きな上昇を期待できるでしょう。
こう見ると、動き始めた銀行株ではありますが、まだまだ重要な関門が二つ残っています。
みずほFGは2016年11月14日、経営諮問機関を設立し、アリババグループのジャック・マー会長、日産自動車のカルロス・ゴーン社長らを起用するとも報じられています。フィンテックの台頭で伝統的銀行業にも新たなディスインターミディエーションのリスクが台頭してきました。矢継ぎ早の改革を示すことが株価本格反騰の必要条件になるでしょう。
筆者の希望を言えば、アリババと資本業務提携をしてアジアの決済と金融のインフラを手に入れるという展開になればと思います。
LIMO編集部