菅政権は「2050年 温室効果ガス排出 実質ゼロ(カーボンニュートラル)」を宣言しています。

筆者はこれまでの連載で、生活に密着しているガソリン車、これからの車である電気自動車(EV)と水素燃料電池車(水素FCV)の普及と課題について、また未来のエネルギーといわれる水素と人工光合成について、一般的に言われる「脱炭素」(注1)の視点から考察しました。

では、すでに大気中に排出されてしまった二酸化炭素(CO2)、あるいは、これからもまだ排出されるであろうCO2そのものを、どのように除去したらいいのでしょうか。その最先端技術を2回にわたり紹介します。

(注1)脱炭素という用語がCO2削減の意味で使われていますが、炭素を含んだ有機化合物は身の回りに数多くありますので、適切な表現でないことには注意が必要です。

自然界における二酸化炭素循環

二酸化炭素除去の最新技術が意味するところを理解するには、まず自然界におけるCO2循環と人為的CO2排出について知る必要があります。

人類が化石燃料を使う前、地球上においてCO2は基本的に水や酸素と同様に、増えもせず減りもせず、うまく循環していたはずです。地球化学的循環は数百万年オーダーの変動で、大気中のCO2は水に溶け、やがて炭酸カルシウム(CaCO3、石)となって固体になり、火山の爆発によりCO2が大気中に出て、また水に吸収されるという循環サイクルが完成します。

生物学的循環は数万年オーダーの変動で、植物は大気中のCO2と水から光合成によりデンプンやセルロースを生成。この時に酸素が発生し、動物は酸素を吸ってCO2を吐いています。このように、CO2や酸素はバランスよく循環しています。これが自然の摂理です。