「地銀の数が多すぎる」という菅総理大臣の発言を筆頭に、地銀再編に注目が集まっている昨今。大幅な改革を求められる中、地銀で働く方々(以下、地銀マン)の間には動揺が広がっています。さらには、“銀行員は銀行でしか通用しない人材”として世間から厳しい目を向けられることも少なくありません。果たして銀行員は、本当に他業界で通用しない人材なのでしょうか?
今回は、全国57行の地銀・信金と連携し、数多くの会社へのサポートを全国の地銀・信金からの紹介で行なってきたサーキュレーションプロシェアリング本部 西日本支部 部長/関西支社長を務める私、笹島 敦史が、今波紋を呼んでいる地銀マンを取り巻く現状について解説します。
地銀を取り巻く厳しい現状...
日経新聞によると「地銀の6割が減益・赤字」とも言われている現在(※)。過疎化や地域企業の廃業・倒産も進んでいることから、地銀の数は多すぎるのではないか?と、政府・世間からは厳しい意見が飛び交っています。さらには、IT技術が発達すれば、いずれ銀行の仕事はAIに奪われる!と煽りも受けることも。
地銀再生を叫ぶ報道が世の中に溢れる一方で、当事者である地銀マンの声は、なかなか世間に上がってきません。今、彼らは何を思い、どのような行動を起こしているのか。そもそも地銀にはどのような人が働いているのか、みなさんはご存知でしょうか。
地銀は、地方経済を支えるという社会的意義の大きい役割を担っています。地域に根ざしてきた歴史も長いため、地元企業からの信頼も特段に厚い。そのため地銀マンは「地元に貢献したい・生まれ育った故郷へ恩返しがしたい」という熱い想いを持った方々がほとんどなのです。
地元愛や貢献心が強い。だからこそ、政府・世間からの煽りに悔しさを滲ませる彼らの姿を多く見かけます。理想と現実のギャップに悶々としながら、与えられた仕事や厳しいノルマをこなす日々。いわばフラストレーションが溜まった状態といっていいでしょう。
しかし一方で、「地銀は再編すべし」との指摘を冷静に受け止めている側面があるのも事実です。銀行の古い体制に危機意識を持っている。だからこそ変わりたい、でも変われない、変わりたい......。
地銀マンがそのサイクルから抜け出せない原因は、銀行の変わらない文化にあります。銀行は、攻めの融資や新規事業などの新しいチャレンジをしたからといって評価が上がるわけではありません。迅速かつ正確な仕事が求められ、とにかくミスなくやり遂げれば、順調に出世ができる評価制度。そのため、古くからのやり方を引き継ぐだけの現状維持から抜け出すのは容易ではないのです。
地銀マン自身もそのような古い体制への危機意識を持っているからこそ、煽る報道にも真正面から反発できない。そんな負のスパイラルが起きてしまっているのです。