この記事の読みどころ

  •  ある特定の業界や分野で、「20xx年問題」と言われることがあります。この表現が普及したきっかけは「2000年問題」でした。以来、大小の違いはあれ、「20xx年問題」なるものが折に触れて取り沙汰されてきました。
  •  「20xx年問題」と言われるものは、比較的予測しやすい事象を原因として、「何か大変なことになりそう」と思えるような変化が多いようです。それに関連する業界を見ていく上で、それが一時的なものか、それとも構造的な変化につながるものなのかを考えていくことが大切です。
  •  今回は「2017年問題」と言われるものを2回に分けてご紹介します。前編は高齢化と医薬品に関する問題です。

「20xx年問題」を考える

たまに「20xx年問題」という表現を聞くことはありませんか。ある特定の業界や分野で、20xx年になると大きな変動が起きる(または、起き始める)のではないかと予測される時に使われる表現です。

思い返せば、「19xx年問題」という表現はほとんど聞いたことがありません。このような表現が広まったのは、やはり、「2000年問題」が最初ではないかと思います。

「2000年問題」とは、当時のプログラミング言語での年表記が下2桁の数字表記になっていたことに端を発する問題でした。1999年は「99年」ですが、翌2000年になると「00年」となり、1900年と混同してコンピュータが一斉に誤作動する可能性が指摘されていました。

特に電力や交通機関、金融等のインフラを制御するコンピュータで思わぬ混乱が生じると懸念され、プログラム書き換え特需が発生し、情報サービスセクターの大きなテーマとなりました。結局、事前対応が奏功したのか、大きな混乱もなく、無事に2000年を迎えました。

それ以降、「20xx年問題」という言葉が局所的に使われるようになったようです。

事業承継の2017年問題

それでは、「2017年問題」と言われるものをいくつか見ていきましょう。

2017年は、人口が多い団塊の世代(1947年~1949年生まれ)が70歳に差し掛かる時期となります。以前から会社員の一斉退職、生産人口の減少という形で現れてきた団塊の世代関連の現象ですが、これからは、企業の経営者層の動向に多くの影響が及ぶと考えられます。

東京商工リサーチによる「2014年全国社長の年齢調査」によると、2014年の段階で、企業の社長の22.5%は70代以上とのことです。5人に1人が70代以上の社長ということですが、その割合がさらに増えていくことは容易に想像できます。

なお、同調査では、社長年齢が高いほど赤字企業が多いことや、減収減益企業の比率は社長の高齢化とともに上昇していることが指摘されています。さらに、休廃業や解散企業のうちの約40%の企業が、社長が70代以上とのことですので、事業承継がスムーズにいっていない状況を示唆しています。

今後、企業の廃業・倒産の増加が目立つことも考えられ、状況によっては失業率にも影響を与えるかもしれません。この分野の関連銘柄としては、企業のM&Aに関するマッチングを行う日本M&Aセンター(2127)、M&Aキャピタルパートナーズ(6080)、ストライク(6196)が挙げられます。

ジェネリック(後発)医薬品の2017年問題

製薬業界では、一から新薬を開発する「新薬メーカー」がいて、開発に成功した薬の特許を取得し、独占的に販売して開発費を回収し、利益を上げます。その薬の特許が切れた後は、誰もがその薬を作ることができるようになりますが、そうした特許切れの薬を低価格で製造する「後発医薬品メーカー」が存在します。

大型新薬の特許が相次いで切れるとして着目された「新薬メーカーの2010年問題」は、後発医薬品メーカーにとっては追い風でした。しかし、2017年頃を境に、大型新薬の特許切れがほぼ一巡することで、成長のエンジンを失うのではないかと言われています。これが、「ジェネリック医薬品の2017年問題」です。

また、ジェネリック医薬品の普及率について、「2017年度に70%以上」が政府の目標となっており、普及率上昇も成長エンジンになりづらくなると予想されます。さらに、国内のジェネリック医薬品は海外に比べて価格が高いとされており、政府からの価格引き下げ圧力が高まることも考えられます。

その結果、国内の後発薬業界では、価格競争を伴うメーカー間のシェア争いが激しくなることが予想され、再編や淘汰も含めて業界地図が変わる可能性も考えられます。

上場している後発医薬品メーカーとしては、沢井製薬(4555)、日医工(4541)、東和薬品(4553)、富士製薬工業(4554)が挙げられます。

「2017年問題」は、まだまだあります。続きはこちらから

 

藤野 敬太