転売ヤーが増えるのは値付けの間違いが原因?

定価で買い占めて高値で売りさばく行為に対して、正当性を主張する人もいます。

とある転売ヤーの主張によると、「転売で高値売買される商品は、元の値付けが間違っている」といいます。「定価が1万円のものが5万円で転売されるなら、それは最初から5万円で売っても問題なかった」といった主張です。

また、「転売を撲滅したいなら、価格変動性にすればいいだけ。初回販売分を10万円で売り、その次が8万円、そして6万円と価格を下げていくようにすれば、適正価格を見つけられる」というのです。「欲しい商品を求めて、行列を作ってしまっている時点で、安すぎる値付けをしてしまっている」といった主張も見られました。

どれだけ喉から手が出るほど欲しいものでも、消費者が出せるお金には限界があります。「10万円までなら出せるけど、100万円までは出せない」このような消費者の多数決で、適正価格は決まるでしょう。ですので、転売が成立するような商品は、そもそもが適正価格ではないという主張は論理的には正しいように感じます。

しかし、それでもすべての事例にこの考えを当てはめるのは無理があるように感じます。事実、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大初期の頃は、マスクの買い占めで品薄状態になったことが社会問題化しました。

また、上述のForbesの記事でも、“scalper”と呼ばれる買い占めグループが、世間からの悪いイメージに反論する記述もありました。しかし、転売ヤーから「価格の歪みを利用することは間違いではない」と、論理的な正当性を訴えられても納得感がありません。

転売ヤーは「仕入れた商品が売れないリスク」を取っているかもしれませんが、それは一般消費者にとっては関係のない事情です。入手を困難にされることは、シンプルに一般消費者には迷惑でしかないと感じてしまうのです。

転売のすべてが悪とは思いません。しかし、本稿で述べた事情を鑑みると、ありがたい転売ヤーがいる一方で、迷惑に感じる転売ヤーがいると思うのも無理からぬことではないでしょうか。

参考資料

高級フルーツギフトショップ「水菓子 肥後庵」代表 黒坂 岳央