日本のエネルギー安全保障の中核である中東では、依然として国家間の緊張が続いている。そして、バイデン政権が公約に掲げるイラン核合意への復帰にも黄信号が点滅している状況だ。
バイデン政権下でも続くシーア派武装勢力の行動
米国防総省のカービー報道官は2月25日、米軍がシリア東部でイランの支援を受けるシーア派武装勢力が使用する施設に対して空爆を行ったと発表した。バイデン政権になって初の空爆となる。
同報道官は、イラクで続くシーア派武装勢力による米権益への攻撃に対する報復であり、今後も同様の措置を取る可能性があるとイランをけん制した。
イラクでは、北部の都市アルビル西部のアンバル州にある米軍駐留施設、また首都バグダッドの米国大使館がある旧米軍管理区域(通称グリーンゾーン)などへのロケット弾攻撃が断続的に続いている。
4年間イランを敵視してきたトランプ前政権と違い、イラン核合意への復帰を掲げているバイデン政権になったことで、こういった攻撃が減少するのではとの見方もあったが、シーア派武装勢力の行動に大きな変化はなく、バイデン政権の核合意復帰への道筋はいっそう難しくなっている。
バイデン政権とイランの関係は平行線が続き、イランはバイデン政権がトランプ前政権下で発動された経済制裁をまず解除することを求めているが、バイデン政権はイランが先に核合意を遵守すべきだと主張。
そして、上述のようにバイデン政権がシリアにある親イラン勢力の関連施設を空爆したことで、イランは今は適切な時期ではないとして、現時点でイラン核合意に関する会合に参加しない意思を明らかにした。
イランは依然として核合意に違反する挑発的な行動を続け、米国をけん制する動きを続けている。