バブル景気の時は、付加価値が69兆円増加しましたが、その過半の37兆円は人件費の増加となり、株主帰属は8兆円しか増えませんでした。

バブル景気時(単位:兆円)


それに対し、アベノミクス景気の時には付加価値が42兆円増えたうち人件費はわずか12兆円しか増えず、株主帰属は38兆円も増えたのです。

アベノミクス景気時(単位:兆円)


企業の株主重視は株高要因

こうした日本企業の変質を肯定的に捉える人と否定的に捉える人がいるでしょう。貧富の格差が拡大する要因だ、と考える人もいるでしょうし、筆者のように「景気にとってはマイナスだ」と考える人もいるでしょう。労働者への賃金の方が投資家への配当や内部留保による株高よりも消費に回る比率が高いからです。

もっとも、本稿は株価について考えるものですから、その観点からすれば日本企業の変質は株価を押し上げる要因であることに違いありません。

PER(株価収益率)が一定だとすれば、株主に帰属する利益の増加は素直に株価の上昇要因となるでしょう。最近のPERは以前より若干高く、割高に見えますが、10年前や20年前と比べて株価が大幅に上昇した割にはPERの上がり方が緩やかに止まっていて、割高感も限定的なのは、株主帰属が増えているからですね。