24日から本格的に上期決算発表が始まる

いよいよ今週(24日~)から、3月決算期企業の上期決算発表(中間決算)が本格化します。上期決算は、半年間の実績もさることながら、多くの企業がその実績の進捗ペースを踏まえ、2017年3月通期の会社計画を見直すと考えられます。

先の第1四半期決算(4-6月期)では、期初に設定した会社計画を据え置いた企業も多かったようですが、今回は違う様相になると見ていいでしょう。

会社計画の変更に対して最も敏感に反応するのが株式市場です。実際、10月に上期決算が発表された小売企業でも(注:小売企業は2月決算期が多い)、発表直後から株価が大きく変動したケースが見られました。

目新しいテーマが見当たらない株式市場では、決算発表は売り買いを呼ぶ格好の材料となるのです。今回の3月期決算企業の上期決算でも、その内容次第で株価の動きが荒くなるでしょう。

不透明要素の多い自動車株は厳しいパフォーマンスが続く

さて、今回の上期決算発表で大きな注目が集まるセクターの1つが自動車になりそうです。この半年間、自動車メーカーは円高に苦しめられ、国内販売の低迷にも大きな影響を受けました。

また、新興国市場の回復にも力強さがなく、頼みの綱である米国市場にも頭打ち感が見られます。さらに、6月下旬のブレグジット問題(国民投票による英国のEU離脱可決)などで、欧州地域にも不透明さが残っています。

トヨタ自動車の過去2年間の株価推移

こうした様々なマイナス要因を踏まえ、自動車メーカー各社は期初時点から2017年3月期業績を厳しく見ていました。それを反映するかのように、自動車株のパフォーマンスは全く芳しくありません。

2015年末と先週末(10月21日)の株価を比較してみましょう。東京市場全体(TOPIX)も▲12%下落していますが、自動車株の中でそれを上回るパフォーマンスとなっているのは、スズキ(7269)といすゞ自動車(7202)の2社しかありません。

他の自動車株はそれを軒並み下回っており、最大手のトヨタ自動車(7203)も直近は回復傾向にありますが、それでも昨年末から▲20%超下落しています。中には、不祥事を起こした三菱自動車(7211)のように一時は半値以下まで下落したものもあるなど、この半年間を見る限り、自動車は最も厳しい株価パフォーマンスだった業種の1つであると言えます。

円高などで多くの自動車メーカーは通期予想を下方修正へ?

今度の上期決算では、従来計画を下方修正する自動車メーカーが多く出てくると予想されます。その理由の1つが為替レートの見直しです。現在、トヨタ自動車など一部を除くと、前提レートを105円/ドルとしている企業が多く見られます。

確かに、足元は一層の円高進行となるリスクは減りつつありますが、それでも105円/ドル前提は楽観的と言えます。おそらく、多くの企業が100円/ドルに変えてくるでしょう。この前提レートの変更だけでも大きな減益要因です。

また、原油価格の下落により、ガソリン価格が安くなりました。その結果、燃費性能が評価されてきた日本車のアドバンテージはやや低下しています。実際、米国などでは燃費がさほど良くない大型車の販売が回復しており、日本車は苦戦気味です。

こうしたトレンドは、下期も続くと見られます。また、新興国市場の回復も遅れ気味であるため、販売台数計画を上積みする環境ではないと言えましょう。

下方修正リスクは今に始まったわけではない

確かに、前提為替レートを円高に見直した上に、販売計画の上積みもないとなれば、業績見通しを下方修正しても何ら不思議ではありません。

しかし、こうした自動車メーカーの業績下方修正リスクは、直近になって顕在化したわけではありません。おそらく、99円/ドル台の円高を付けた8月中旬には認識され始めたと考えられます。

つまり、現在の株価には、今度の上期決算時に発表する可能性が高いと見られている下方修正は、既に相応に織り込み済みと言えるかもしれません。少なくとも、下方修正があった場合、全く予期していなかったサプライズにはならないでしょう。

“会社予想据え置き”となれば、株価上昇のドライバーに

逆に、“小幅な下方修正で済んだ”となれば、株価にはプラスに作用する場合も考えられます。そして、会社計画据え置きともなれば、株価の大幅上昇となる局面もあり得ます。

実際、自動車メーカー各社の熾烈なコストダウンの効果が発揮されれば、“下方修正なし”となる可能性も相応に高いと思われます。そうした観点で今回の決算を見れば、より一層の興味が湧くでしょう。

 

LIMO編集部