初対面の人とこれから関係を築いていきたいと思う場合、相手に自分のことを知ってもらう必要があります。ただ、オンラインコミュニケーションも増えた最近では、「初対面が画面越し」で、いつも以上に会話が続かなかった、手応えがなかったという経験をされた方もいらっしゃるのではないでしょうか。

 しかし、まずは自分を知ってもらうために、いざ「自己開示」をしようとすると、「自分の話ばかりでナルシストだと思われないかな……」「自分の話なんて他人は興味を持ってくれるのかな……」と不安になるものです。

 そこで、この記事では、拙著『オンラインでも好かれる人・信頼される人の話し方』から、初対面の人と打ち解けるために有効な会話のコツを紹介します。

初対面で自己開示するための〇〇トークとは?

 ここでは、初対面の相手に対して自己開示をする際に、心がけておくとよいポイントについてお話しします。自己開示の目的は、相手にマウントを取ることではありません。リアルでのやりとりが減ってしまう分、いかに初対面から少しでも自然に打ち解けて、「この人は安心できる人だ」と思ってもらえるかがポイントです。マウントを取るのは論外ですが、一方的に自己開示をしすぎても相手を困惑させてしまいます。

 そこで、あなたにぜひ準備しておいてほしいトークのネタが二つあります。

 一つ目は「〈相手が共感しやすい〉プチ自虐」、二つ目は「〈相手が素直に褒めやすい〉プチ自慢」です。

 特に二つ目は、少し意外に思った方がいるのではないでしょうか? よく見ていただくと、どちらも「相手が」と主語が相手であることがポイントです。

〈相手が共感しやすい〉プチ自虐

 一つ目に挙げた「〈相手が共感しやすい〉プチ自虐」から触れていきます。

 相手は初対面の人です。あなたのことをよく知らないのに、いきなり重たすぎる自虐ネタやしくじりエピソードを話されても反応しづらいものです。素直にゲラゲラ笑っても良いものなのか正直わからず、かえって気を遣わせてしまいます。

 私のように人前で話す機会が多い人にもありがちですが、自己開示に慣れていると、つい自虐ネタをしすぎて、相手を「ちょっと何と言っていいかわかりませんけど……」と困らせてしまうことがあります。

 自虐ネタといっても相手に気を遣わせすぎず、クスッと笑えたり、共感しやすかったりするものがベストです。

 最近、勘違いしてしまった軽いエピソード、不得意なことや苦手な食べ物、ご家族との日常的なやりとりなど。意識してほしいのは、初対面の相手が「あ~わかります!」と気軽に笑顔で共感のあいづちができることです。

過度な自虐や悪口はNG

 コミュニケーションには正解はなく、相手にもよるので、はっきりとした線引きは難しいところです。いわゆるパーソナルスペースを犯す危険性のある話題や、「この人と仲良くなるのが不安……」と思われるレベルの内容は避けたほうがいいでしょう。

 たとえば、私が実際に経験したもので言うと、複雑な家庭環境や婚姻歴、病気、身近な人の悪口になりうるものといったところでしょうか。仲が良ければ何とも思わないことも、初対面で仕事のやりとりであれば、より反応に困ってしまいます。

 相手の不安を取り去るどころか、かえって気を遣わせるような「自分勝手な自己開示」は、とても危険です。相手によっては、そのレベルの自己開示を相手にも強要させているようにも捉えられてしまうので、気をつけてくださいね。オンライン上では、リアルよりも突っ込みづらいことも理解しておきましょう。

〈相手が素直に褒めやすい〉プチ自慢

 そして、二つ目に挙げた「〈相手が素直に褒めやすい〉プチ自慢」についても触れます。

 自己開示の目的はマウントを取るのではない、相手に承認してもらうのではないとお伝えしてきました。それなのに、なぜ自慢して良いと言っているのでしょうか?

 ここでのポイントは、あなたがちょっとした自慢エピソードを話すことにより、相手に「あなたからのプチ自慢も歓迎ですよ!」と、本音で打ち解けたいという空気を作ることです。私が好感を持ったものですと、ご自身のふるさと自慢やご家族の自慢、子どもの頃のちょっとした武勇伝などでした。

 大切なポイントは、相手が素直に褒めやすいことであり、相手に対して、「自分を大きく見せるため(=相手を下に見ている)の自慢」ではないことです。言い始める時に「最近のちょっと嬉しかったことをお話ししても良いですか?」なんて愛嬌たっぷりに話すのもおすすめです。

内容的にも時間的にも「プチ」であるべし

 プチ自虐とプチ自慢の両方のエピソードがあるからこそ、

「この人は本音で自分と接してくれている」
「裏表がなさそうな人だな」

と思えて安心できます。

 オンラインで初対面となると、リアルのとき以上に相手との距離を縮めることは難しくなります。また、一方的に長々とエピソードを語るわけにもいきませんよね。自虐ネタも自慢ネタも、内容的にも時間的にも「プチ」であることを意識しましょう。

 ちょっと人には言いづらかったことを、お互いに無理なく開示することで、自然と距離を縮めることができます。相手を困らせるような自分本位な自己開示ではなく、相手と良い関係を築くための自己開示を心がけてみてくださいね。

「しくじりエピソード」は良いの? 悪いの?

 ところで、自己開示というと「しくじりエピソード」を連想する人が多いでしょうか?

 実際に『しくじり先生 俺みたいになるな!!』(テレビ朝日系)という人気番組もありますよね。毎回、ゲストが自分の失敗や挫折経験をさらけ出し、そこからの学びを「しくじり先生」として生徒役ゲストや視聴者に授業として伝える番組です。私も好きな番組なので、よく観ています。

 元々はそんなによく知らなかったゲストでも一気に話に引き込まれ、番組が終わる頃にはすっかりファンになってしまう感覚がよくあります。

 あなたにも、これと似たような経験があるのではないでしょうか? 「今は成功していてキラキラ輝いている人も、過去にはこんな失敗をしたことがあるんだ」「自分らしく自信満々に生きているように見える人でも、自分に自信のない時期もあったんだな」と親近感が湧き、勇気づけられるような気持ちになりますよね。まさにこれが「自己開示によるポジティブな効果」であると実感します。

 しかし、ここには一つ落とし穴があります。自分の失敗や挫折といった「しくじりエピソード」をただ話すだけでは、相手があなたのファンになってくれるとは限りません。自己開示の一つとして「しくじりエピソード」を語る時には、注意点があります。

『しくじり先生』の例でもわかるように、自己開示としての「しくじりエピソード」は、相手にとって「プラスの影響力」を持っていることが大切です。自己開示をされた側にとって、親近感や信頼感を持てたり、自分もがんばろうと勇気づけられたりすることに意味があります。

「乗り越えたしくじり」でないとNG!

 家族や友人相手なら話は別ですが、その失敗や挫折の真っ只中での自己開示は、相手にとってプラスの影響力を持つとは限りません。今は乗り越えて幸せな姿だからこそ、過去の「しくじりエピソード」はプラスの意味を持つのです。自己開示をすることで、相手が暗い気持ちや不快な気持ちになってしまっては本末転倒です。『しくじり先生』でも、今もなお「しくじりの真っ只中」なゲストは基本的に観たことがありませんよね。

 私は仕事柄、多くのリーダーと呼ばれる人たちに出会ってきました。相手から信頼してもらうためには、自らの自己開示が大切であるということを知っている人は非常に多くいます。しかし、その自己開示が相手に対してプラスの影響力を持っているのか、マイナスの影響力になっているのかを冷静に判断できていない人がいるのも事実です。

「しくじりエピソード」というのは、一度は谷底に落ちているものの、それと真正面から向き合い、今ではまた山を這い上がっているから安心して話を聞くことができるのです。話にプラスのエネルギーも宿るし、聞いている人からの承認や賞賛も求めることはありません。聞いている人からすれば、学びにもなり、参考にもなります。

 今がまだ思いきり谷底の渦中の場合は、自分との向き合い途中です。無意識のうちに相手からの承認を執拗に求めてしまったり、ネガティブな言葉が増えてしまったりして、聞いている方は正直、良い気持ちはしません。信頼できる家族や友人に相談することはもちろん結構ですが、自己開示を目的とした「しくじりエピソード」の利用は危険であることを覚えておいてください。

筆者の桑野麻衣氏の著書(画像をクリックするとAmazonのページにジャンプします)

自分の話が相手にプラスかマイナスかを考えよう

 稀に、よっぽど突き抜けたカリスマ性のある人の場合には、渦中の悩みや課題をさらけ出しても、あまり大きな影響がなかったり、かえって人間味になったりすることもあるかもしれません。しかし、基本的には現在進行形の「しくじりエピソード」は関係構築のできていない相手にはマイナスの影響力を及ぼす危険があります。自戒も込めてここに記しておきます。

 特にオンラインともなると、表現方法も限られてしまうので、正しい温度感では伝わらず、よりネガティブに聞こえてしまうこともあります。

 あらためて、ご自身の自己開示は、相手にプラスマイナスのどちらの影響力を及ぼす可能性があるのか、冷静に向き合ってみるといいでしょう。あなたの周りでも、自己開示がプラスになっている人、マイナスになっている人をよく観察して分析してみてください。自己開示することの本来の意味を忘れないでくださいね。

 

■ 桑野 麻衣(くわの・まい)
 学習院大学卒業後、全日本空輸株式会社(ANA)に入社。グランドスタッフとして、最重要顧客DIAMOND会員専用カウンターのサービス責任者、教育訓練インストラクターなどを務め、7年間で100万人以上を超えるお客様サービスに携わる。オリエンタルランドへの出向、ジャパネットたかた、再春館製薬所グループ企業を経て独立。コミュニケーション、リーダーシップ、接遇マナー等のテーマで企業研修や講演を行い、これまでの受講者は3万人を超える。著書『好かれる人の話し方、信頼される言葉づかい』『オンラインでも好かれる人・信頼される人の話し方』のほか、PRESIDENT、MORE、CLASSY、Oggi、美人百花などメディアへの寄稿・出演も多数。

 

桑野氏の著書:
オンラインでも好かれる人・信頼される人の話し方

桑野 麻衣